2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650310
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西澤 公美 信州大学, 医学部, 助教 (90573379)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 視覚的情報 / こども同士 / 模倣行動 |
Research Abstract |
本研究は,通常行われているセラピストとの1対1での理学療法に加え,こども同士による遊びを通した運動を行うことにより,被験者であるダウン症児がモデルの行動に注目しその動作を模倣することで,運動機能が向上する過程を定量的に検討することを目的とした. 24年度の主な実施計画項目は,実験計画と被験者選定,研究の打ち合わせ,予備実験の実施と実験手順の見直し・修正,倫理委員会申請であった.これらの過程のうち,こども同士による遊びの設定については,対象となる児の認知機能や運動機能の多様性から実験としての統制がとりにくいことが挙げられ,こどもに似せたモデル人形の導入を検討した.しかし,児の症状や運動発達レベル,認知レベルが多様であった点が課題となり,さらには被験者に対し人形の動きがモデルとして妥当ではない可能性が考えられた.そこで,被験者自身の手足,または体にセンサーを着け,その動きがモニター上にスケルトンとして表示されるジースポート社製の三次元動作解析装置を使用することで,児に自分の動きを他者のような動きとして認知させて運動をしてもらい,そのときの運動量を定量的に解析する方法を考えた. これに伴い24年度は予備実験の前段階として,ジースポート社の3軸加速度計センサーを2個購入し,実験場面での具体的な使用方法を健常成人にて検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
24年度の実験計画として,こども同士の組み合わせによる遊びの設定を想定していたが,実験的統制の困難さから,モデル人形の導入を検討した.しかし,実際には対象となる児童デイサービスのダウン症児の症状,運動発達レベルが様々であったことから被験者間比較を行いにくい可能性が明らかになった.さらに,現時点における児の認知レベルが低かったため,研究内容を理解しモデルの動きを模倣するという課題に取り組める状態ではなかったことも分かった. また筋力に関しては,一般的に行われる筋の最大収縮の50%の負荷をかけての測定が難しいことから,代案として定量的指標には児の自発的な運動量の測定を行い,質的指標としては行動の変化を評価することで,目的に合った研究としての妥当性が得られると考えた. そこで課題の遂行方法について変更を加え,児に自分の動きを他人のような動きとして客観的に認知させた上で,自発的な運動量に変化があるかを検討する方法を考案した.具体的には,ジースポート社の3軸加速度計を四肢および体幹につけて動いてもらうことで,自分の動きがモニター上にスケルトンとして表示される三次元動作解析装置の使用を検討することとした.この結果,児自身の動きを鏡以外の手段で視覚的情報として与えたことで自発的な運動量が増えたことがわかれば,臨床において,セラピストと1対1で治療を行うほかに,児自身の動きを客観的に見せることがダウン症児の運動量や行動に良い影響を与える可能性があることが示唆されると思われる. 現在は予備実験の前段階として,健常成人を対象として動作解析装置を試用し,こどもに応用する際の課題を抽出している段階である. このような経緯に時間がかかったために,当初の計画より遅れが生じてしまったと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度では,課題となっている被験者の選定を完了し,3軸加速度センサーを付けての動作解析を対象となる児で予備実験として行い,単位時間当たりの運動量の測定を実施することから開始する.現在は,児の四肢および体幹に3軸加速度センサーを装着して運動を行ってもらうことで,モニター上に映されるスケルトンの動きを他人のような動きとして認知させ,逆模倣の効果として示唆されているように運動や行動の変化を質的,および定量的に検討する内容を考案している.具体的には,対象児を①スケルトンを見ながら運動する群②鏡を見ながら運動する群③こども同士で動作を見ながら運動する群に分け,それぞれ試行時間を10分として横断的に測定する.指標は,加速度と質量から計算される運動量,およびThe Motor Imitation Scale (MIS; Stone et al. 1997)などの行動評価表の点数とする. その際,被験者間で統制のとれた実験デザインになっているか,センサーを装着しての動作解析に妥当性があるかという点について併せて吟味する. この過程で問題が生じなければ,倫理委員会に書類を提出し,本実験に向けて計画を進めることとする.具体的には,①被験者の対象となる施設・センターにて研究内容の説明を行い同意を得る,②被験者を募集する,③予備実験にて修正点があった場合,本実験に入る前に再度,実験機器や動作環境の確認を行う.④本実験を開始する,⑤追加実験の必要性の判断,または実験内容の修正等の検討を行う.という過程を予定している. 本研究では,測定実施時の児の体調や測定環境が被験者間で大きく変動しないよう配慮して実施する必要がある.また,特に予備実験に時間がかかることが予想されるので,本実験の開始は25年度末を目安とする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度では27,599円の未使用額が生じたが,これは当初計画で見込んだよりも安価に備品を購入できたためであった.次年度使用額としては,前年度に購入したジースポート社の3軸加速度センサー2個に加え,四肢および体幹の運動量をより詳細に測定できるよう,さらに2個のセンサーの購入を検討している.その他,研究に関する研修会,学会や打ち合わせ等の旅費,また研究助手への人件費としても使用予定である.
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