2013 Fiscal Year Research-status Report
睡眠・覚醒リズムと身体機能・能力の関係を解明し高齢者を健康的日常活動へと導く研究
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24650316
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
新小田 幸一 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (70335644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿南 雅也 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (10517080)
新小田 春美 九州大学, 医学研究院, 准教授 (70187558)
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Keywords | 睡眠 / 高齢者 / バランス |
Research Abstract |
平成25年度は高齢者を被験者とした14日間のアクティグラフによる睡眠観察から,平均睡眠時間以上を確保していた翌日の測定条件をコントロール条件,対して睡眠が不足していた翌日の測定条件を睡眠不足条件としてバランス機能の計測を行った.準静的バランス機能評価の機能的リーチテスト(Functional Reach Test: FRT)では,睡眠不足条件はコントロール条件よりも有意に成績が低かった.動的バランス機能評価である椅子から立ち上がって歩行を開始する起立歩行(Sit-to-walk: STW)テストでは,動作開始から第1歩目の初期接地までの所要時間に条件間で差を認めなかったが,この間の股関節最大屈曲角速度と鉛直床反力は睡眠不足条件で有意に低値を示した.注意持続性や視覚的探索力評価のTrail Making Test A(TMTA)およびTrail Making Test B(TMTB)では,両条件間で差を認めず,予測された結果とは異なったものとなった.これは睡眠が大きな影響を与えると考えていたTMTAおよびTMTBの評価結果に被験者間のばらつきが大きかったためであり,睡眠の状況の影響は,他の因子とともにFRTのような準静的なものだけでなくSTWのような動作時の動的要素に対し,複雑に絡んでいる可能性が高いと思われた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
被験者に装着したアクティグラフのデータにより,睡眠時間の長短が課題動作のいくつかのパラメータに影響を与えていることは提示できたが,実験データの解析に予想された以上の長い時間を要した.床反力計に関しては,可視的ではない固定性に問題が生じていることが分かり,STW課題での有効な力学的データは,動作開始から歩き出し第1歩目の初期接地時間までのものに限られた.このため,睡眠状況の影響を的確に捉える課題動作の絞り込みに至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に解析した被験者は,日常の活動度が比較的高い被験者であったため,一般的な地域在住の高齢者集団とはいえなかった.今後は,施設利用者を被験者とすることを了解している近郊の施設の協力を得て実験,調査を行う.また過去に科学研究で協力を得た高齢者にも被験者としての協力を求める.平成25年度に得られた,「睡眠不足は特に課題中の下肢関節の運動学,床反力の大きさなどの動的な要素に影響を及ぼしている」という結果と,新たな上述の被験者の評価により,平成25年度になし得なかった睡眠状況を反映する課題動作の絞り込みおよびその評価を行う,それらを以て高齢者が生き甲斐のある生活を送るための「適切な睡眠」と「ほどよい運動」のプログラム作成とその評価を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験データの解析に予測していたよりも大幅な時間を要したこと,機器に不具合点が生じていたこと等により,出費用途としていた学会発表のための準備経費・旅費,謝金等に使用する額が計画よりも低くなったため. 平成25年度末に1台のアクティグラフを購入して所有台数は2台となり,アクティグラフは多くの被験者への装着となることが予想されるため,このための被験者への謝金金額を考慮した.また,研究分担者の1人が遠隔地へ異動したため,打ち合わせ検討会等のための旅費を多めに分配・計上した.加えてこれまでの解析結果を発表,論文投稿するための投稿料等に平成25年度からの繰越額と合わせて計画的に使用する.
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