2012 Fiscal Year Research-status Report
前庭系刺激によるパーキンソン病の姿勢反射障害改善効果
Project/Area Number |
24650323
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
神成 一哉 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (20241466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒沢 忠輝 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (40259792)
岩月 宏泰 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (50184891)
尾崎 勇 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (90241463)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / 振動 / 前庭系 / 姿勢反射障害 |
Research Abstract |
本研究は,0.5~2 Hz 程度の比較的遅い周波数による全身振動で前庭系を刺激する装置を新たに開発し,これをパーキンソン病に適用して前庭機能に変化を与えることにより,パーキンソン病の姿勢反射障害を改善させることを目的としている。 平成24年度は,①姿勢反射障害を定量的に評価する方法の確立と,②全身振動負荷が健常成人およびパーキンソン病患者の運動に与える効果の検討の2つを目標とした。 まず,健常成人を対象として,健康増進器具として従来から使用されている全身振動刺激装置BIO-RELAX(大島製作所)を用いて,体の各所にどのように振動が伝搬しているかを調べた。次に,走行による全身疲労がこの振動装置の使用によって回復効果を示すかどうかを調べた。その結果,下肢から与えられた振動は下肢には比較的強く伝搬するが,体幹から頭部へは徐々に減衰すること,また振動を与える方向によって上方への振動伝搬の度合いが異なることが観察された。全身振動負荷によって全身疲労が軽度改善する傾向がみられたが,有意な改善はなかった。 次に,パーキンソン病患者を対象として,上記の全身振動装置による振動を与えた前後でのパーキンソン症状及び歩行時間の変化を観察した。全身振動負荷後にはパーキンソン症状の指標であるUPDRSが有意に改善し,歩行時間も有意に短縮した。 上記研究と並行して,八戸高専の黒沢を中心に,新たなタイプの全身振動装置として,外的動力によって自動的に揺れる自動ロッキングチェアを作成し,現在振動速度を微調整するシステムの調整作業を行っている。次年度からこの装置を健常者及びパーキンソン病患者に適用して,ゆるやかな振動の効果をさらに検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.姿勢反射障害の客観的評価方法として,いまのところ従来からのtimed up and go testと重心動揺計検査を用いて評価しているが,必ずしも十分な精度で評価できていない。これに代わる評価法として,外力が加わった時の筋電図波形を解析して姿勢反射能力をみる方法を検討している。しかし,筋電図波形の再現性がいまひとつで,解析が進んでいない。この方法が確立されれば,精度よく客観的姿勢反射能力を評価できるようになると考えている。 2.新たな前庭系刺激装置として「自動ロッキングチェア」を考案し,現在作成の途中であるが,振動周波数を確実に調整する方法が開発されていないことと,現在の方法では振動させる際に一種の騒音が生じるため,実際に使用可能な装置とするためには別の駆動方法を考案する必要があるため,まだ実用レベルの完成には至っていない。これらの問題点を早急に解消し,「自動ロッキングチェア」が完成した後に,健常人及びパーキンソン病患者に適用してみる実験を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度早期に「自動ロッキングチェア」を人間に適用可能なレベルの装置として作成し,パーキンソン病患者にそれを用いて,パーキンソン症状が改善するかどうかを検討する。また,健常人に対しても使用し,他の効果,例えば自律神経機能の安定化作用等がないかを調べる。 次に,自動ロッキングチェアとは別のタイプの全身振動装置として,仰臥位の状態からの体幹の左右へのローリングをさせる装置,いわゆる一種の「自動寝返りベッド」を開発し,これを健常人及びパーキンソン病患者に適用して,自律神経系への影響及びパーキンソン症状改善効果の有無を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は,主に下記の3つの事項に用いる予定である。 ①「自動ロッキングチェア」の調整及び「自動寝返りベッド」の新作。研究分担者である八戸高専の黒沢が担当し,これらの作製を行う。 ②研究の被検者となっていただく健常者及びパーキンソン病患者への研究協力謝礼。 ③国内外で開催される神経内科領域とリハビリテーション領域の学会への出張旅費。これら学会において研究成果を発表するとともに,同領域におけるパーキンソン病治療研究の進展状況を把握し,同領域の研究者との情報交換をはかる。
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Research Products
(4 results)