2013 Fiscal Year Research-status Report
前庭系刺激によるパーキンソン病の姿勢反射障害改善効果
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24650323
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
神成 一哉 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (20241466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒沢 忠輝 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (40259792)
岩月 宏泰 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (50184891)
尾崎 勇 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (90241463)
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Keywords | パーキンソン病 / 振動 / 前庭系 / ロッキングチェア |
Research Abstract |
本研究は,0.5~2 Hz 程度の比較的遅い周波数による全身振動装置を開発し,これをパーキンソン病に適用して各種のパーキンソン症状を改善させることを目的としている。その機序としては,ゆるやかな振動による前庭系の刺激が基底核系の機能異常を改善させる可能性を想定している。 平成25年度は,八戸高専の黒沢を中心にゆるやかでスムーズな前後振動を与えることのできる自動ロッキングチェアを完成させた。その自動ロッキングチェアを用いて,健常成人に自動ロッキングチェアで振動負荷を与えた際の心理的快適度および自律神経機能の変化,およびパーキンソン病患者に自動ロッキングチェアで振動負荷を与えた際の各種パーキンソン症状の変化を調べた。 ①健常人を対象とした研究:健常成人女性20名に自動ロッキングチェアによる振動を0.6Hz,5分間与え、その前後にストレス尺度と快適尺度,唾液アミラーゼ活性値,加速度脈波の高周波成分と低周波成分の比(LF/HF値)を測定した。その結果,振動負荷終了5分後の時点でLF/HF値は有意に低下がみられたが,他の全ての測定項目には有意な変化は認められなかった。 ②パーキンソン病患者を対象とした研究:パーキンソン病患者12名に対し,自動ロッキングチェアによる0.6Hz,10分間の振動を与えた前後でのパーキンソン症状(UPDRS part 3で評価),Timed up and go test,姿勢の変化を観察した。振動負荷後にはUPDRS part 3が有意に改善したが,他の指標に有意な変化はみられなかった。 以上の結果より,ゆるやかな全身振動刺激は健常人には副交感神経作用優位の状態とし,パーキンソン病患者にはパーキンソン症状を軽度改善させる効果があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.比較的遅い周波数でスムーズな振動を与えることのできる自動ロッキングチェアの作成に時間がかかり,とりあえずの完成が平成25年度半ばであったため,それを用いた健常人およびパーキンソン病患者を対象とした研究の開始が遅れた。 2.パーキンソン病患者の筋固縮および姿勢反射障害の客観的評価法として,他動的運動または外乱時の筋電図の解析結果を用いることを検討したが,技術的問題や筋電図の再現性の問題などから実現しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.現時点では0.6Hz,10分間の振動刺激を基準として研究を行っているが,これが理想的な刺激条件であるか不明であり,さらに条件を変化させて最適な刺激条件を見出す必要がある。 2.自動ロッキングチェアによるゆるやかな全身刺激が神経系にどのような影響を与えているのかをさらに検証する方法として,腓腹筋のH波や脳波などの神経生理学的手法を加えて解析していきたい。 3.自動ロッキングチェアとは別のタイプの全身振動装置として,仰臥位の状態からの体幹の左右へのローリングをさせる装置,いわゆる一種の「自動寝返りベッド」を開発し,これを健常人及びパーキンソン病患者に適用して,自律神経系への影響及びパーキンソン症状改善効果の有無を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.当初想定していたよりも少額で自動ロッキングチェアが作成できた。 2.振動の方向やスピードをさらに自由に調節できるタイプの振動装置の開発も検討していたが,そこまで至らなかった。 1.自動ロッキングチェアの改良,および振動の方向やスピードをさらに自由に調節できるタイプの振動装置の開発のために使用する。 2.健常者およびパーキンソン病患者に対する自動ロッキングチェアによる効果の検討をさらに進めるための研究協力者への報償費,また論文の投稿料,別刷費用など。
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Research Products
(4 results)