2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650325
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
高木 都 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (00033358)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | in vivoイメージング / 腸壁内神経 / セロトニン4受容体 / 神経再生・新生 / 2光子顕微鏡 / H-lineマウス |
Research Abstract |
本研究の目的は、神経が光るトランスジェニックマウス(以下TGマウス)を使い、新しいテクノロジーである2光子励起顕微鏡による腸壁内神経のin vivo(生体内)イメージングに成功することであった。この手法を用いて損傷腸壁内神経あるいは老齢モデルマウスの腸壁内神経の再生(新生)過程を明らかにし、最終的には神経活動に応じて神経が光るTGマウスを用いたin vivoイメージングにて神経再生・新生過程を制御・促進する因子(低分子化合物:5-HT4受容体刺激薬等)を特定し、腸壁内神経の再生が消化管機能・排便機能の改善効果をもたらすことを明らかにする。 本研究は、腸壁内神経障害によって起こる消化管機能・排便機能障害を根本的に治療する方法を開発する基礎研究で、これまでリハビリテーション分野ではほとんど着手されていない、画期的な研究である。 申請者のグループでは、すでに、直腸切離吻合モデルにて5-HT4受容体刺激薬が損傷した壁内神経の再生・新生を促進し、排便機能障害を速やかに回復させることを示している(クエン酸モサプリド用途特許第5089556号;Neurogastroenterol. Motil. 22: 806-814, 2010)。 申請者は、通常の方法では観察できない腸管切離吻合術後の組織修復過程で生じた肥厚組織における5-HT4受容体刺激薬の腸壁内神経系の再生・新生過程の促進作用を、神経の光るTGマウスと2光子励起顕微鏡によるin vivo(生体内)イメージングを行うことにより成功させた。この成果は論文として発表した(PLoS ONE)。 神経の光るTGマウスの腸管切離吻合モデルで、クエン酸モサプリドを1-2週間飲水にて投与して、2光子励起顕微鏡によるin vivo(生体内)イメージングを行うと、吻合部の表面に近いところにまとまった神経細胞の固まりを光る細胞群として観察できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、通常の方法では観察できない腸管切離吻合術後の組織修復過程で生じた肥厚組織における5-HT4受容体刺激薬の腸壁内神経系の再生・新生過程の促進作用を、神経の光るトランスジェニックマウス(TGマウス)と2光子励起顕微鏡によるin vivo(生体内)イメージングを行うことにより成功させた。この成果は論文として発表した(PLoS ONE)。 埼玉大学中井教授が作成する神経活動に応じて神経が光る遺伝子組換え型蛍光カルシウムプローブ(Genetically encoding calcium indicators; ECIs) のTGマウスが用意できたという知らせがあったので、in vivoイメージングによる生理実験法を確立する次年度の研究計画の遂行を目指して、予備実験に赴いた。 しかし、残念ながら、GFPによる蛍光は2光子顕微鏡で観察できたが、腸管を伸展してもその蛍光強度は変わらず、神経活動の変化を測定することはできなかった。 この研究は本来次年度に進めるものであったので、全体としては、概ね順調に研究は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
埼玉大学中井教授が作成する神経活動に応じて神経が光る別のラインのTGマウスを入手でき次第、in vivoイメージングによる生理実験法を確立する。910nmの波長で吻合部より肛門側で遺伝子組換え型蛍光カルシウムプローブ(Genetically encoding calcium indicators; GECIs) の反応をまず、無傷のマウスで、測定する。ついで、腸管内に挿入したバルーンを測光部位に影響を及ぼさないように水を注入して伸展するか、粘膜の電気刺激を行う。刺激により光る神経の蛍光強度が上昇する反応を捉えることができるか予備実験を行う。 予備実験が成功したら、GECIsのTGマウスで腸管切離吻合モデルを作成し、クエン酸モサプリド10-100 microMを飲水投与する。2週間の飼育期間後、吻合部をチャンバーに確実に固定した後に、in vivoイメージングを行い、吻合部より口側部位の腸管を刺激して、再生・新生神経が反応するかどうかを調べる。 さらに、GECIsのTGマウスの作成が上手くいかない場合には、オレゴングリーンBAPTA-AMなどのCa2+インディケーターを腸管に打ち込んで神経に取り込ませて測定する予定である。 これらの実験がうまく行かなかったときには、神経幹細胞移植の実験を試行し、腸管切離吻合部位に新神経細胞が2光子顕微鏡で検出できるかどうか試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題を遂行するために必要な経費は、消耗品費と旅費等である。1)実験動物費として、マウス1匹2,500円x 80匹で200,000円/年となる。25年度で200,000円となる。糖尿病モデルマウスや老齢マウスをこのマウスから準備する。2)次に免疫染色をするための5種類の抗体は高価であり、25年度分で500,000円を計上する。3)また、実験用の薬品(麻酔薬、筋弛緩薬、マーキング色素を含む)は、25年度で500,000円を計上する。4) 24-25年度に亘って手術に必要な注射器、カテーテル、縫合糸など100,000円/年とオスモポンプやスポンゼル等薬剤を投与するのに必要な消耗品費として250,000円/年を計上する。(小計350,000円) 5)生理研、埼玉大学への出張時の宿泊費として200,000円/年を計上する。交通費として200,000円/年を計上する。調査・資料収集のための旅費として、100,000円/年を計上する。(小計500,000円) 6)論文投稿料として100,000円/年を計上する。 1)-6)を合計すると2,150,000円となる。
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