2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650328
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
今泉 敏 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (80122018)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 嚥下機能 / 摂食機能 / 非侵襲的嚥下機能検査 / 脳機能 / 声門閉鎖 / 食物認知機能 / 認知症 / 認知症 |
Research Abstract |
嚥下機能を非侵襲的に検査できて適正な嚥下リハビリテーションを行うために必要な非侵襲的嚥下機能検査装置の試作を目的として、1)~3)の研究を遂行し、以下の成果を得ることができた。 1) 非侵襲的嚥下機能検査装置の試作:喉頭の上外側から光を当てて、声門の下外側に漏れてくる光の量を計測することによって、嚥下時の声門閉鎖の程度を評価する検査装置を試作し、嚥下機能の検査を試みた。呼吸時の声門開閉運動や発声時の声門内転・声帯振動に関わる信号を取り出すことに成功した。空嚥下時の声門閉鎖を観測できることも確認できた。ただし、喉頭部の脂肪が厚い研究協力者では適正な出力信号を取り出すことができなかった。 2) 認知機能と嚥下機能の関連に関する研究:認知症などによって食物・飲料認知機能が低下した場合、摂食・嚥下運動にどのような影響が現れるか、非侵襲的方法で研究した。青汁、リンゴジュース、水のどれか5mlを研究協力者に見えない状態で口に注入し、味わった後に飲み込む課題を行った。飲料を注入する前に「青汁、リンゴジュース、水」のどれかを音声で提示した。食物認知機能の低下を模擬するために、音声提示と注入飲料が一致する条件と不一致の条件を設け、嚥下運動や主観評価がどのように変化するかを調べた。嚥下関連筋の筋電図と嚥下音を同時記録するとともに、課題遂行後にVisual Analog Scaleを用いて、飲料のおいしさや飲み込みやすさを計測した。その結果、若年者は不一致条件でも一致条件と同じ嚥下運動が可能であったものの、高齢者では不一致条件で嚥下反射の時間構造が変化した。認知機能の低下によって飲食物の認知が不正確になった場合、高齢者では摂食・嚥下運動にも影響することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非侵襲的嚥下機能検査装置は試作できたことに加えて、飲み物摂取時の嚥下機能を非侵襲的に調べて飲食物認知機能の低下が高齢者では摂食・嚥下運動にも有意に影響することを明らかにできたことなど、初年度の目的を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
光を用いた非侵襲的嚥下機能検査装置では首回りに脂肪層が厚い研究協力者など信号を適正に観測できない例もあるため、さらに工夫を加えて負担ができるだけ少ない非侵襲的嚥下機能検査法を開発する。それらの方法を使用して、飲食物認知機能に課題を抱える高齢者の摂食機能と嚥下機能を研究し、飲食物認知機能が低下した高齢者でもできるだけ健康な摂食・嚥下機能を維持できるような方法を提案していく。 具体的には、音声や画像を予め提示して口に含む食物に関する事前情報を与えたときに嚥下活動がどのように変化するか、風味知覚がどのように変化するか、それらの関係が加齢とともにどのように変化するかを調べる。人が食物を摂取するとき、味や温度、テクスチャー、量などの、様々な口腔や咽頭の感覚受容器からの情報を動員して、食物の諸特性を分析し認知しており、こうした口腔や咽頭の感覚受容器からの情報が嚥下運動調節に影響する。介護や嚥下リハビリテーションの現場で使用される嚥下食は、本来の味や形状、物性と違っているため、予測と異なることが多く、食欲減退や違和感、不安感を訴える嚥下障害者も少なくない。介護現場では適切な声かけや写真などの視聴覚情報の活用によって、味わいを深くして食欲を増すことが可能であることも知られている。そこで本研究では、非侵襲性光電嚥下観測装置を活用して嚥下運動を観測しつつ、機能的脳機能画像法(fMRI 及びNIRS)によって、声かけなどの事前情報が風味知覚や嚥下運動に変化をもたらす中枢機構を明らかにする。予め提示される音声や画像によって摂取飲料に対する予測の有無,予測の成否が、嚥下運動と脳活動にどう影響するか,影響に年齢差があるかどうかをfMRI と非侵襲性光電嚥下観測装置を用いて解析する。 以上の結果を総合して誤嚥を防ぐための年齢に応じたリハビリテーション法を考案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光を用いた非侵襲的嚥下機能検査装置では首回りに脂肪層が厚い研究協力者など信号を適正に観測できない例もあることから、さらに工夫を加えて、研究協力者の負担ができるだけ少ない非侵襲的嚥下機能検査法を開発し、飲食物認知機能に課題を抱える高齢者の摂食・嚥下機能を研究する。直接経費次年度使用額722,000円はこの目的に使用する。
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