2012 Fiscal Year Research-status Report
筋疲労・筋電位導関数の導出と機能回復を促す機能的電気刺激
Project/Area Number |
24650349
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
横井 浩史 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90271634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 幸生 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (10334583)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生体機能代行 |
Research Abstract |
本研究では表面筋電位のリアルタイム計測と運動と感覚に関係する脳賦活の計測により,これまで電気刺激を用いた麻痺疾患の運動機能の回復訓練において問題であった刺激に対する忌避反応や疲労を少なくする電気刺激法の波形パラメータを導出する方法論を開発し,長期リハビリテーションへ応用する. 当年度は,電気刺激を付与した際の生体情報を計測するため,モーションキャプチャー,筋電計,fNIRS及びトレーニング機器を用いた身体運動,筋活動及び脳活動を同時に計測可能な多チャンネル運動計測・解析システムを構築した. さらに,電気刺激を付与しながら一定の筋負荷を付与することで筋の等尺性収縮を発生させ,その時の各種計測データとその時間的推移,随意収縮と電気刺激のみにおける収縮との比率から,それぞれの筋負荷条件における疲労度およびその疲労要因の推定を試みた.具体的には,まず,デジタル握力計により一定握力での等尺性随意収縮時における筋活動度合とその時間的推移を表面筋電位センサにより計測する.計測された多チャンネル筋電位信号を周波数解析し,その一定時間における平均およびその変動値,また周波数特徴値(周波数中央値=MPF)から筋張力変化や休憩に対する影響など,疲労回復により発生する外乱を除去し,筋活動強度とその継続時間の関数(疲労度関数)として疲労度を推定する関数を得た.また,スペクトラムの経時変化の様相から随意運動における疲労と類似しているのか・電気刺激による疲労か否かの分別を行うことで,電気刺激における疲労を評価した.電気刺激と筋電位計測を交互に行うことによりノイズの低減を図りながら電気刺激中に随意運動する場合と随意運動のみの場合を被験者3名実施し2条件で特徴的な周波数帯が異なること,すなわち疲労度関数の母関数が電気刺激の有無で異なること,また電気刺激を付与することによって早期に疲労が起こることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の交付申請書に記載した目的に対して,実施計画では大きく分けて①計測環境の準備,②疲労度関数の構築,③電気刺激ノイズの影響を小さくする計測手法を実施予定であったが,現時点でそれぞれの課題に対して期待する結果が得られていると自己評価したため,評価区分を「おおむね順調に進展している。」とした.また.③に関しては,皮膚-電極間におけるコンデンサ効果により,電気刺激ノイズが残るため,適切な筋電位算出区間の設定と,高精度分解能(18bit以上)を持つAD変換器により計測し,既知である入力電気刺激との差分演算(スペクトラム50mv以上)により電気刺激ノイズを除去方法する方法論を開発する予定であったが,電気刺激と筋電位計測を交互に行うことで概ねノイズの影響を小さくできたため,25年度の被験者を用いた疲労度関数の検討を先行して実施した.よって次年度において前述の差分演算によるノイズ除去手法について検討する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は,前年度に開発した疲労度推定手法を疲労の時間的推移を考慮したモデルに拡張し,リハビリに必要な筋収縮力を確保し,筋疲労が少なくかつ刺激に対する忌避反応の少ないような電気刺激手法の開発を行う. 一般に,随意収縮が比較的弱い回復途上の麻痺患者において,疲労による収縮力の急激低下は,転倒などのリスクをもたらす.そのため,収縮の様態(等尺性収縮,等張性収縮,等速性収縮)に限らないリハビリ中の任意の運動に対して,疲労の推定とその予測が必要となる.そこで歩行時などの筋電位および身体運動データから疲労度推定値の時系列変化モデルをカルマンフィルタなどの予測モデルで構築し,適切なリハビリ時間と同様の運動を行うまでの適切な休憩時間の推定を可能にする. また,昨年度実施した筋電への刺激ノイズ除去手法を改良し,より臨床応用可能なレベルにするため,高精度分解能(18bit以上)を持つAD変換器により計測し,既知である入力電気刺激との差分演算(スペクトラム50mv以上)により電気刺激ノイズを除去方法する方法論の開発及び高性能な筋電センサシステムの開発を実施する. 一方,提案する電気刺激法による多種多様な電気刺激波形において筋疲労を低減させるという制約条件を満足させかつ忌避反応の少ない電気刺激波形を電気刺激時のfNIRS計測およびその刺激に対する認知を,被験者のアンケートにより探索する.運動野,体性感覚野前頭前野,そして痛み・感情との関連性のある島皮質の賦活状態に着目し,対象部位へ圧覚を付与した時に生じる感覚器本来の賦活,電気刺激時の賦活及び電気刺激による筋収縮を伴わない健常者の随意収縮時の賦活とのそれぞれの差異を評価することで,忌避反応の少ない電気刺激波形が満足すべき条件を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度では,直接経費1,100,000円に対して,研究開始当初,筋電センサシステム及び32chインターフェースを購入予定であったが,当初交付申請時に減額となったこと,また性能は低いが当大学の既存設備として利用可能なものが手配できたため,計画の一部を変更して方法論の構築・検討を優先し,今年度は既存設備にて研究を実施した(次年度使用額として720000円を繰越).次年度以降により性能の高い筋電計測システムを新たに開発する. また,25年度の研究費の使用計画は,次年度使用分として繰り越した予算を備品・試作費(1,000,000円),謝金(200,000円)へ充当する.また当初の計画どおりの旅費220,000円,その他400,000円とする.
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