2013 Fiscal Year Research-status Report
ALS患者のための脳波(ERP)を用いた意思伝達支援
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24650360
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
加納 尚之 島根県立大学, 看護学部, 教授 (90177551)
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Keywords | ALS / CA / ERP |
Research Abstract |
視覚刺激や聴覚刺激に対して現れる事象関連電位(ERP)の成分であるP200とN200とP300を検出することによって,ALS患者が注意を傾けている刺激を特定することができ,これを意思情報として利用することによって、ALS患者の意思伝達が可能となる。 平成25年度は、前年度に開発したALS患者が注意を傾けている刺激(「文字」「音声」「文字と音声」「項目」「写真」「イラスト」)を特定することができる実験システムを用いて、「リハビリテーション実験」を手がけた。この装置は、PC、生体アンプ、AD変換器、リレーボード、ERPを検出するためのソフトウェアで構成している。実験は、「親指」、「人差指」、「中指」、「薬指」、「小指」などの項目を、患者に対する刺激とする。患者はこのとき所望の指を動けと念じる。そして、同時に元気だった頃と同様に指を動かそうとする。このとき本システムは、刺激終了後、その指を特定し自作した外部の装置によりその指を動かす。たとえ外部の装置により動かしたとしても、自らの意思で指を動かすことで、患者に「喜びと感動」を与えることができた。現在までに100回程度の実験を行ったが、すべて患者の所望の指を動かすことに成功している。この研究成果については、平成26年3月に愛媛大学にて開催された「平成26年電気学会全国大会」において、「脳波(ERP)を利用したALS患者の目標刺激特定実験 -リハビリ実験の試み-」と題して発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、ALS患者に対して目標刺激特定実験を行った。具体的には、「文字」「音声」「文字と音声」「項目」「写真」「イラスト」の6種類の刺激を用いて実験を行い、最高で100%という極めて高い正答率を得ることができた。この研究成果については、平成25年3月に名古屋大学にて開催された「平成25年電気学会全国大会」において、「ALS患者のための脳波(ERP)を利用した目標刺激特定実験」と題して発表を行った。また、さらにデータを取得し分析し、内容をさらに充実させ、平成25年9月には、電気学会論文誌C(受付番号13009605)に「ALS患者のための事象関連電位を利用した目標刺激の特定」と題して投稿した。 また、患者に「親指」、「人差指」、「中指」、「薬指」、「小指」の項目を刺激として提示し、患者は所望の指を動けと念じる。同時に元気だった頃と同様に指を動かそうとする。そして目標刺激として特定した指を、外部の装置によりその指を動かす。この実験はリハビリテーション実験である。この実験を100回程度行い全て正しく特定した。そして、このデータに対して周波数分析を行うためのFFTプログラムを開発した。この研究成果については、平成26年3月に愛媛大学にて開催された「平成26年電気学会全国大会」において、「脳波(ERP)を利用したALS患者の目標刺激特定実験 -リハビリ実験の試み-」と題して発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
運動を行うことで、頭皮上の特定の部分で、脳波の特定の周波数領域のパワーが減少したり、増加したりする現象が知られている。また、運動を想起するだけでもその現象が起こるという報告もある。 本研究では、ALS患者に対して、「親指」、「人差指」、「中指」、「薬指」、「小指」などの項目を、1つずつランダムにALS患者に対して提示する。そして患者は所望の指を動けと念じる。同時に元気だった頃と同様に指を動かそうとする。そして目標刺激として特定した指を、外部の装置によりその指を動かす。これは、ALS患者が所望する指を動かすための「リハビリテーション実験」であり、今後も精力的にこの目標刺激特定実験を遂行していく。また、周波数分析を行うためのFFTプログラムを開発した。そこで、この実験で得たデータに対して、周波数分析を行い、運動想起に対して、頭皮上のどの部分の、どの周波数帯域のパワーの増減があるかどうかを確認したい。そして、この現象を患者の意思表示として利用したいと考えている。 また、患者はたとえ外部の装置により、所望の指を動かすことができたとしても、自らの意思で指を動かすことができ、患者に「喜びと感動」を与えることができる。そして、ALS患者は脳から指などへの信号伝達はできないが、この実験を繰り返すことにより、指から脳への信号伝達経路が開拓され、患者は指を動かすときの感覚を思い出し、リハビリテーションの効果が期待できるのではないかと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ALSは進行性の難病であり、本人や家族の苦痛は計り知れない。そこで、脳波を利用して、「心で念じるだけ」で意思伝達ができ、また、身の周りの家電製品などを制御できるシステムを開発し、早期の実用化を目指している。また、「リハビリテーション実験」を繰り返し行うことにより、指から脳への信号伝達経路が開拓され、患者は指を動かしていたときの感覚を思い出し、リハビリテーションの効果が期待できるのではないかと考えている。本システムの開発に対する患者や家族、そして医療関係者の期待は極めて大きい。 そこで、このような期待に応えるには、複数のシステムを構築して実験を行い、より多くの患者に有効であることを示す必要がある。そこで、本研究においては、平成24年度・平成25年度に作成したシステムをお手本として、平成26年度にもう1セット、システムを構築する。 平成24年度に「文字」「音声」「文字と音声」「項目」「写真」「イラスト」の6種類を刺激とするシステムを1セットを構築した。次に、平成25年度に「親指」、「人差指」、「中指」、「薬指」、「小指」を刺激とする「リハビリテーション実験システム」の機能を追加した。本システムは有効に稼働することを確認している。次年度は、このシステムをお手本として、2セット目を構築する。したがって、次年度の研究費は2セット目のシステムの構築、学会誌への論文の投稿、または学会での発表などに使用する計画である。
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