2012 Fiscal Year Research-status Report
色覚障害者に配慮した均等色空間および色差式の確立にむけた基礎研究
Project/Area Number |
24650362
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
坂本 隆 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (90357111)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 色覚異常 / 色空間 / 色差 |
Research Abstract |
色覚障害者向け技術開発をしたり、色覚障害者向け視覚標示物を作成したりするためには、色覚障害者が感じる色の差異(色差)を予測して、これを定量的に評価する方法が必要である。しかし現在のところ、当該の方法は確立されていない。これを解決するためには、色覚障害者の知覚的色差と等歩度になる均等色空間および色差式が必要である。本研究では先天色覚異常、特に1型2色覚と2型2色覚に着目し、均等色空間の構築と、色差式の導出を試みる。 平成24年度は先天色覚異常、特に2色覚の色覚特性を表現する際使用される混同色線と混同色中心、およびLMS錐体色空間の幾何学的関係性に着目し、2色覚の色属性を明示的に表現可能な色空間を分析的に構築し、日本色彩学会において基本的なアイディアを報告した。しかし当該学会において実施された討議により、色空間構築に関する新たな着想を得たため、当初のアイディアとそれに基づく心理物理実験は保留し、2色覚の色属性表現により適した、新しい着想に基づく色空間構築に改めて着手した。具体的には、色空間を構成する2軸を、lightnessとchromaticnessという完全に独立な属性として扱うことができるように構成し、またそれらがLMS錐体色空間から計算可能であるように変換式を設定した。それにより、2色覚の色属性を明示的に表現することができる色空間を、改めて提案することに成功した。なお本研究成果は、平成25年度の国際色彩学会において報告する。また新提案の色空間に基づく心理物理実験も順次開始する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要に記載した通り、当該年度に日本色彩学会において実施された討議により、色空間構築に関する新たな着想を得たため、当初アイディアとそれに基づく心理物理実験は保留し、より2色覚の色属性表現に適した色空間構築に改めて着手したため。なお新しいアイディアに基づく色空間構築は完了しており、その成果は平成25年度の国際色彩学会において報告される(論文受理済み)。また新しいアイディアに基づく心理物理実験も順次開始しており、若干の遅れは取り戻せると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
均等色空間と色差式を特定する際に必要となる色弁別閾値と大域的色差を2色覚者を実験参加者とする心理物理実験によって取得する。閾値測定のための視覚刺激は、CRTディスプレイと視覚刺激装置(ViSaGe)を用いて生成し、様々なlightnessとchromaticnessの条件におけるデータを、上下法と呼ばれる心理物理実験手法などを用いて取得する。取得したデータは、提案する色空間内に色弁別楕円として配置され、色空間の均一性を向上させるための非線形変換式が同定される。また大域的色差については、色刺激のlightnessとchromaticnessを実験参加者自らが変化させる調整法により取得する。得られたデータは、提案する色空間内に散布させることによって、色空間の均一性が確認可能となるだけでなく、色空間の色差均一性を向上させるための非線形変換式も同定可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
心理物理実験に必要な実験機材・消耗品・ソフトウエアなどの購入費、実験参加者の謝金、研究討議ならびに本研究成果発表のための国際会議参加費、旅費、文献資料代などを、次年度の研究費から捻出する予定である。
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