2013 Fiscal Year Research-status Report
色覚障害者に配慮した均等色空間および色差式の確立にむけた基礎研究
Project/Area Number |
24650362
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
坂本 隆 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (90357111)
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Keywords | 色覚異常 / 色空間 / 色差 |
Research Abstract |
本研究は先天色覚異常,特に2色覚の色覚特性をモデル化すると共に,均等色空間と,それに基づく色差の計算方法を構築することを目標としている. 対象とする2色覚(色覚異常)は,3次元のLMS錐体色空間が2次元へ縮退している(すなわち,1型2色覚の場合はL軸が縮退して無くなり,2型2色覚の場合はM軸が縮退して無くなる)と考えられる.また,残りの2軸で構成される色空間は,2色覚者が知覚する色の差異の程度(色差)に対して,等歩度でないと予測される.これを知覚量と等歩度になるように,LMS錐体色空間に対し非線形変換を施すとともに,2色覚者が知覚する色の属性(lightnessとchromaticness)に対応した2軸を同定し,これを構成する必要があると研究代表者は考えている. そこで研究代表者は,1型2色覚のlightnessはM軸にだけ依存し,2型2色覚のlightnessはL軸にだけ依存して決まると仮定し,色知覚モデルを構築した.またchromaticnessについては,1型2色覚はM軸とS軸の値の比で,2型2色覚はL軸とS軸の値の比で,それぞれ表現されると仮定し,chromaticnessを比として表現する色知覚モデルを構築した.この色覚モデルについては,国際色彩学会(AIC2013)において発表するとともに,日本色彩学会誌に研究報告を掲載した.色知覚モデルの各パラメータの値については,視覚実験に基づく算定をしなければならないが,視覚実験装置が故障し,海外製品のため修理と装置の復旧に半年以上を要してしまい,本年度は視覚実験を実施できなかった.そこで,研究期間の1年延長を申請し,本年度実施することができなかった視覚実験を,次年度実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
視覚実験装置が平成25年7月頃に故障し,海外製品のため修理と装置の復旧に半年以上を要してしまい,本年度は視覚実験を実施できなかった.そのため,本年度実施予定であった視覚実験とそれに基づく解析をほとんど進捗させることができなかった.幸い装置の修理は平成26年2月に完了し,実験再開の目途がついたため,研究期間を1年延長する申請をし,許可された.本遅延は,次年度実施予定の視覚実験実施によって取り戻すことができると想定される.
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Strategy for Future Research Activity |
均等色空間と色差式を特定する際に必要となる色弁別閾値と大域的色差を,2色覚者を実験参加者とする心理物理実験によって取得する.閾値測定のための視覚刺激は,CRTディスプレイと視覚刺激装置(ViSaGe)を用いて生成し,様々なlightnessとchromaticnessの条件におけるデータを,上下法と呼ばれる心理物理実験手法などを用いて取得する.取得したデータは、提案する色空間内に色弁別楕円として配置され,色空間の均一性を向上させるための非線形変換式のパラメータが決定される.また大域的色差については,色刺激のlightnessとchromaticnessを実験参加者自らが変化させる調整法により取得する計画である.得られたデータは,提案する色空間内に散布させることによって,色空間の均一性が確認可能となるだけでなく,色空間の色差均一性を向上させるための非線形変換式のパラメータも同定可能となる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
色覚異常の色弁別閾値を測定する被験者実験を計画していたが,視覚刺激を提示するための実験装置が平成25年7月に故障してしまったため,当該装置の修理と再調整が完了するまで,被験者実験を延期する必要が生じた.そのため,被験者への謝金に充当する予定であった金額が,そのまま残ってしまった.なお当該装置は,輸入代理店を通じて海外メーカーに修理依頼し,平成26年2月に修理完了した.当該装置故障にかかる問題はすでに解決済みである. 色覚異常の色弁別閾値を測定する実験へ参加する被験者への謝金,および当該被験者実験に基づく研究成果を国際会議で報告するための海外渡航費および国際会議参加費に充当する.
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