2013 Fiscal Year Research-status Report
筋のボリューム及びその変形を考慮した次世代筋骨格モデルの開発
Project/Area Number |
24650383
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平島 雅也 東京大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (20541949)
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Keywords | 筋骨格モデル / 筋ボリューム / 干渉計算 / シミュレーション / バイオメカニクス |
Research Abstract |
筋骨格モデルは、バイオメカニクス関連の幅広い分野において欠かせないツールとなっている。しかし、現在広く用いられているモデルのほとんどは、筋を直線で近似しているため、肩関節まわりの複雑な筋の走行を再現することができないという大きな欠点があった。本研究では、この問題を根本的に解決するために、筋のボリューム及び筋同士の接触による変形を考慮した次世代筋骨格モデルを開発することを目的としている。 ボリュームをモデル化する際の最大の課題は、「計算負荷の増大をいかに抑えるか」である。本研究では、近年急速に発展しつつある並列計算プログラミング手法を用いることによって解決をはかる。1年目の平成24年度では、格子座標系を用いて質点を配置した単一筋のプロトタイプモデルを作成し、並列計算処理によって計算量を抑えながら多量の質点の計算を行うことができることを実証した。 2年目の本年度(25年度)では、複数筋を同時にシミュレーションするための準備として①干渉計算の実装、②ヒト肩筋形状の格子座標モデルへの変換を行った。 ①干渉計算の実装: 考えられる全ての3角形同士の干渉チェックを行うのは計算負荷が高く非効率であるため、ブロードフェイズとナローフェイズからなる2レベルの干渉チェックシステムを作成した。干渉判定された部位についてはペナルティ法によって反発力を生じさせてシミュレーションしたところ適切に反発が再現できていることを確認した。 ②格子座標モデルへの変換: 本シミュレーションにおいては、格子座標系で筋をモデル化する必要があるため、市販の筋表面形状モデル(Zygoteモデル)から格子座標系モデルへの変換を行った。対象としたのは、肩甲上腕関節と肩甲帯に関与する33個の筋部位である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より、最終年度(26年度)では肩の多数の筋形状を同時にシミュレートし、現実的な筋走行を再現することを目的としてきた。このためには、①干渉計算の実装と②肩筋の格子座標系モデルの作成が急務であったが、25年度中に①と②をともに完了することができた点で、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。以下、それぞれの詳細を述べる。 ①干渉計算:当初、すべての3角形同士の干渉をチェックする予定であったが、プログラムを精査したところ、ブロードフェイズとナローフェイズからなる2レベルで干渉をチェックした方が効率がよいことを見出した。また、将来的に並列計算へ移行することを考慮して実装したため、最終年度(26年度)ではスムーズに作業がすすむことが期待できる。 ②格子座標化:筋にはさまざま形状があり、初年度(24年度)に作成した格子座標系モデルがすべての筋に当てはまるわけではない。たとえば、上腕二頭筋や上腕三頭筋では分岐があるので、格子座標化を行う前に筋頭ごとにポリゴンを分割するなどして対処した。その結果、肩甲上腕関節、肩甲帯に関わるほぼすべての筋の格子座標化を終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(26年度)では、当初の予定通り、肩の多数の筋形状を同時にシミュレートし、現実的な筋走行を再現することを試みる。以下の順に取り組む予定である。 ①干渉可能性のある筋のペアリング: 多数の筋を同時にシミュレートする際、すべての筋同士の干渉をチェックしていては効率が悪い。そこで、解剖学的に接触する可能性のある筋同士を予めペアリングして登録し、登録されたペア同士の干渉をチェックすることで計算負荷を軽減させる予定である。 ②干渉計算の並列化: 筋形状計算だけでなく干渉計算も並列化した方が格段に計算速度は増すと考えられる。並列計算を行うGPUのメモリ構造を有効に利用しながら、高速な干渉計算プログラムを作成する。 ③プログラムの64bit化: 現在の32bitプログラムを用いて多数の筋を同時にシミュレートする場合、メモリが足りなくなる可能性がある。この問題は、モデルの精密さにも依存するものであるが、将来的にはいずれ生じる問題である。そこで、プログラムを64bit化する作業を行ったうえで、多数筋の同時シミュレーションを行い、本モデルの実用性を検討していく予定である。
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