2012 Fiscal Year Research-status Report
活動筋の無酸素性作業閾値の空間不均一性~酸素供給と消費のミスマッチに注目して~
Project/Area Number |
24650401
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
古賀 俊策 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 教授 (50125712)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 活動筋の無酸素性作業閾値の空間不均一性 |
Research Abstract |
成人10名を被験者として、漸増負荷(ランプ)自転車運動時における活動筋の複数部位における無酸素性作業閾値(AT)を測定した。 1)酸素の供給と消費のバランスの測定: 時間分解近赤外分光装置(TRS-NIRS)を用いて、大腿筋の4部位(外側広筋と大腿直筋の遠位と近位部)における脱酸素化ヘモグロビン濃度(HHb)を連続測定した。超音波ドップラー装置を用いて4部位の皮下脂肪厚を測り、HHb値を補正した。2)活動筋におけるATの推定:活動筋のHHb をNIRS で、さらにpHをNIRSと磁気共鳴スペクトル装置でそれぞれ計測した。そして、活動筋のHHbとpHが非線形的に増加する時点を求めて、ATを推定した。3)活動筋(脚筋)全体の酸素消費動態(VO2)を反映する肺胞の酸素摂取量を連続的に測定した。4)全身レベルのAT、つまり乳酸閾値(LT)と換気閾値(VT)の測定:指尖採血による乳酸値とガス交換諸量の計測値から推定した。5)計測データの解析:漸増運動負荷と上記の生体反応、および位相(時間的なずれ)の関係を線形・非線形近似モデルを用いて解析した。活動筋ATの空間不均一性の評価:各部位の計測値とその平均値の差(2乗平均平方根誤差)、および非線形近似解析で得られた生体応答の変動係数を計算した。 全身レベルと活動筋の複数部位におけるATの比較と生理的メカニズムの検討: 活動筋の複数部位におけるATの空間不均一性がどの程度、疲労しやすい速筋線維を動員して、全身と活動筋全体の有酸素性持久能力に影響を与えるのかを検討中である。そして、今後も活動筋ATの空間分布に関する生理的メカニズムを継続して考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
運動時では、運動強度の増加にともなって活動筋における酸素供給(血流)が消費に追いつかず、両者のミスマッチによって酸素不足が生じる。したがって、活動筋内部の無酸素性作業閾値(AT)、つまり、無酸素的エネルギー供給機構が働き始める時点は空間的に不均一になり、活動筋の有酸素性持久能力が制限を受ける可能性がある。 そこで、自転車負荷装置を用いて、漸増負荷(ランプ)運動時における活動筋の複数部位におけるATを測定した。1)酸素の供給と消費のバランスの測定。2)活動筋のHHbとpHをNIRS装置で計測した。そして、活動筋のHHbとpHが非線形的に増加する時点を求めて、ATを推定した。3)活動筋(脚筋)全体の酸素消費動態を反映する肺胞の酸素摂取量と心拍数を連続的に測定した。4)全身レベルのAT、つまり乳酸閾値と換気閾値の測定:指尖採血による乳酸値とガス交換諸量の計測値から推定した。5)計測データの解析:漸増運動負荷と上記の生体反応、および位相(時間的なずれ)の関係を線形・非線形近似モデルを用いて解析した。活動筋ATの空間不均一性の評価:各部位の計測値とその平均値の差(2乗平均平方根誤差)、および非線形近似解析で得られた生体応答の変動係数を計算し、ATの空間分布状態を推定した。 現在、酸素供給と消費、およびpHの動態を基にして、運動時の筋線維動員パターンを推定し、活動筋ATの空間分布の生理的な機序を考察している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は、最近、ラットの筋収縮時において、活動筋のPO2と近赤外分光法(NIRS)で測るHHb(VO2/Qを反映)の応答は近似することを報告した。そこで、上記の動物筋線維の酸素交換特性を基にして、ヒトの筋線維動員パターンをNIRS法で推定する方法を採用する。とくに、無酸素性代謝がより多く関与する速筋線維では、酸素供給(Q)が不十分になるので酸素不足が顕著になり、PO2とpHが減少すると予想される。そこで、活動筋のHHbとpHの値を基にして複数部位における筋線維の動員パターンを推定し、ATの空間分布との関連を検討する。 以上の測定から、運動開始時の複数部位における活動筋ATの生理的機序について考察する。さらに、共同研究者であるBarstowとPooleの両教授、およびRossiter博士と共同で研究結果を検討し、運動時の筋線維動員パターンとAT、および酸素不足の関係を考察する。また、有酸素性運動能力の評価や筋肉の部位ごとのリハビリテーションなど、得られた研究成果をスポーツ現場と臨床現場への応用することについても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
運動開始時の複数部位における活動筋ATの生理的機序を考察するために、Barstow、Pooleの両教授、およびRossiter博士を招聘する費用として用いる。さらに、活動筋の複数部位における筋線維の動員パターンをNIRS法で推定し、ATの空間分布との関連を検討する実験を行う。
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Research Products
(5 results)