2013 Fiscal Year Research-status Report
血栓症および血管系疾患予防の可能性を探る:運動およびナットウキナーゼ摂取の効果
Project/Area Number |
24650412
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
浜岡 隆文 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (70266518)
|
Keywords | 線溶系 / 凝固系 / 納豆菌培養エキス / D-dimer / フィブリン/フィブリノーゲン分解産物 / アンチトロンビン / フィブリノーゲン |
Research Abstract |
3ヶ年にわたる本研究プロジェクトの主目的は、血栓症発症リスクの高まる状況下での血栓症リスク因子を抑制する方策を探る一環として、納豆菌培養エキスであるナットウキナーゼの摂取効果を検証することにある。 本年度は、前年度(研究1年目)に得られた予備的測定結果をもとに、若年健常者という同様の身体的特徴を有する実験対象者の人数を増やし、ナットウキナーゼ摂取効果の基礎的検討を多角的に行うことにあった。 本年度は、合計6名の若年健常男性を対象に、2,000FU(フィブリン分解単位)のナットウキナーゼを単回投与し、投与前および投与2、4、6、8時間後に採血および各種測定を行い、血圧、心拍数、血液凝固・線溶系因子に及ぼす効果を検証した。結果として、フィブリン分解の直接的指標であるD-dimerの投与2、6、8時間後における上昇(P<0.05)、フィブリンおよびフィブリノーゲン分解の指標であるフィブリン/フィブリノーゲン分解産物(FDP)の投与4時間後の上昇(P<0.05)を認めた。さらに、血液凝固系の中でも特に重要な制御因子であるアンチトロンビンの有意な上昇(投与2時間後、P<0.01)、および投与8時間後のフィブリノーゲン濃度の低下(P<0.05)と部分トロンボプラスチン時間の延長を認めた。特に、ナットウキナーゼのアンチトロンビン増加作用は、本測定にて初めて明らかとなった事実である。 ナットウキナーゼ2,000FU摂取の急性効果として、線溶系亢進作用、および血液凝固系因子の抑制作用の両者が明らかとなった。現在、患者への使用が許可されている血栓溶解薬、および治験が行われている薬は、プラスミンを介したフィブリン分解作用を有する1経路だけのものであるが、ナットウキナーゼは前述のとおり、これまでにわかっているだけでも複数の作用経路を有している。このユニークかつ強力なフィブリン分解作用は、今後、血栓症の治療薬もしくは予防薬としての可能性を有している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェク3ヶ年の目的は、血栓症発症リスクの高まる状況下での血栓症リスク因子を抑制する方策を探る一環として、納豆菌培養エキスであるナットウキナーゼの摂取効果を検証することにある。平成25年度は、特に、ナットウキナーゼの単回摂取に関する基礎的データ採取に主眼をおいて実験を実施した。結果として、研究実績の概要でも述べたとおり、血液凝固系・線溶系の複数の経路に作用する効果を有するという結果が得られた。これらの結果は、ナットウキナーゼ摂取の急性効果が明らかになったことを示すばかりではなく、今後の応用実験のための基礎的資料ともなる有益な情報を含んでいると考えられる。また、この結果は現在、学術論文として発表するための準備が進められている。 当初の目的に対し、本年度の進捗状況はほぼ合致しており、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究1年目(平成24年度)、および2年目(平成25年度)に得られた結果をもとに、血栓症の発症リスクが高まるシチュエーションでのナットウキナーゼの摂取効果を検証したいと考えている。具体的には、発汗による大量の脱水(1時間あたり1~2リットル)を伴う夏場の長時間運動をモデルとした条件下での血栓症リスク因子に対する、ナットウキナーゼの事前摂取の効果の検証である。当大学は、温度、相対湿度および酸素濃度がコントロール可能な人工気象室を有しており、脱水実験の経験も豊富である。立命館大学生命倫理委員会でも、本研究実施に関する審査は承認済である。医師の指導/監督のもと、実際の現場に近い厳密にコントロールされた条件下における、精度の高いデータ採取を目指す。
|