2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650417
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
太刀川 弘和 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10344889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 清貴 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80550152)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 音響特徴量 / 音声解析 / 心理的ストレス / 一時気分尺度(TMS) / 状態・特性不安検査 (STAI) |
Research Abstract |
本研究は、多次元的なストレス測定を行い、人の音声情報に含まれるストレス指標を抽出し、即時的にストレスを計測できる基本技術を開発することを目的とする。 H23年度は、健常者を対象に、研究1:認知ストレス負荷群、非負荷群で、負荷前後に心理的ストレス指標と相関する音響特徴量を抽出する、無作為割付研究、研究2:日常生活で心理的ストレス尺度と音声記録を一定期間行う、タイムサンプリング、イベントサンプリングを用いた縦断観察研究、の2研究を実施した。結果は次の通りである。 研究1:オープンソースの音声解析ソフトウェアであるOpenEARを用い、健常者106名を無作為に認知ストレス負荷群と非負荷群に分類し、両群で状態・特性不安検査 (STAI)、血圧測定、音声記録を行った後、負荷群にはアナグラム課題の音声回答を、非負荷群には音読課題を施行した。負荷群では音響特徴量のうちメル周波数ケプストラム係数(MFCC)が、非負荷群に比して有意な変化を示し、基本周波数(F0)はSTAIの課題前後の変化と相関を示した。音響特徴量の解析により心理的ストレスの有無や程度を検出できる可能性が示唆された。 研究2:19名の健常者に、研究開始時にストレス関連心理尺度セットを記入してもらった後、本研究用に独自開発したアプリの実装モバイル端末を、被験者一人につき各一台貸与し、14 日間、1 日3回の音声収録(電話番号読み上げ、自由発話)、一時気分尺度 (TMS)記載、血圧測定を実施した。その後端末を回収してデータを収集し、各種指標と音響特徴量の相関を検討した。結果、心理尺度セットと音響特徴量の期間平均から、抑うつと強度(Intensity)、緊張と基本周波数(F1~F4)との相関が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究2の音声収集アプリ開発、研究方法の詳細について時間を要し、データ解析を開始したのが25年1月となった。またデータに相当な個人差があったため、何を持って客観的な心理的ストレス評価とするかについて研究分担者、協力者と慎重に議論を重ね、被験者の自覚的なストレス評価と収録音声の他者評価を比較検討するなどの追加実験を施行したことで時間を要した。このため、今年度は成果の研究発表に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2の中間解析の結果、TMSは初期値以降時間変化で他の心理尺度と相関しなくなることが判明し、かつ各種の初期ストレス尺度は共相関が強いことから、即時的ストレスを測定するためには、TMSと共時的に相関する電話番号読み上げ音声の音響特徴量を抽出することが最も有用と結論した。そこで今年度すぐ精神障害患者群の実験を開始するのではなく、まず研究2においてサンプル数を増やし、TMSと共時的に相関する、いいかえれば心理的ストレスと共変する音響特徴量を見出し、その客観的有用性を十分検討した上で、患者群での実験実施の検討に移行する。また最終年度である25年度は、研究成果をまとめ、学会発表と論文報告を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はサンプル数増加を企図し、モバイル端末や解析ソフトを追加購入するとともに、複雑な多変量データの入力・解析を速やかに行って研究を加速するため、非常勤職員の人件費に主要な研究費を充てる。
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