2012 Fiscal Year Research-status Report
体力と認知機能との関連性に着目した認知症予防運動プログラム開発に関する挑戦的研究
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24650437
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大藏 倫博 筑波大学, 体育系, 准教授 (60396611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 和司 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (00569121)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 認知症予防 |
Research Abstract |
当該年度に実施した具体的な内容は次(①~③)の通りであった。 ① 約500名の地域在住高齢者を対象とした横断データを用いて、体力と認知機能との関連性を網羅的に検討した結果、認知機能と密接に関連する体力要素は、巧緻性、歩行能力、反応性の3つであることが明らかとなった。しかし、これらの関連性はあくまで横断的な検討の結果であり、因果関係を示すものではない。因果関係を明らかにするたには、縦断データの活用や介入研究の実施が不可欠である。そこで、次の課題として縦断データを取得・分析することとして、検討を進めた。 ② 約100名の高齢者の縦断データにより、加齢変化を伴う体力と認知機能の相互関連性を検討したところ、①と同様に、巧緻性、歩行能力、反応性の3つの要素が認知機能と強い関連性を示した。横断的検討に加え、縦断的視点からもこれらの関連性が確認できたことは、認知機能と3つの体力要素との関連性の妥当性を強化するものと捉えることができる。 ③ そこで、①と②の結果を踏まえ、多変量解析により上記3項目を説明変数とする認知機能評価尺度(推定式)を導出した。この推定式により、高齢者の認知機能を体力の観点から総合的に評価することができるようになり、健康づくりや介護予防の現場において、高齢者自身にとってもわかりやすく、かつ、動機づけにもなる、有用なツールとして活用できるようになることが期待される。 今後の日本が対応すべき社会的課題は、近い将来3,000万人になるとも言われるまだ認知症を発症していない高齢者の認知機能を早期に評価・把握し、効率的な予防サービスを講じることである。当該年度の研究成果は、そのための確かな第1歩として意義があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、当該年度の検討課題は3つであった。具体的には、①横断データ(400名)による、体力と認知機能との関連性の網羅的検討、②縦断データによる、加齢変化を伴う体力と認知機能の相互関連性の検討、③多変量解析による体力テストを活用した認知機能評価尺度(推定式)の導出、である。これらの課題は、当初の申請書に記載された通りに進捗しており、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後(平成25年度)は、前年度の研究成果を踏まえ、認知症予防運動プログラムを開発することが最重要課題となる。既に我々は、「スクエアステップ」と呼ばれる新しい介護予防エクササイズを考案し、その安全性や効果を検討している。これまでに、3ヵ月間(週1回)の短期間ながらスクエアステップの継続実践は、ウォーキング実践者に比べて、高齢者の認知機能により良好な影響を及ぼす可能性を見出した(大藏ら,2010)。そこで、今後は、このスクエアステップに加えて、脳機能賦活を企図した手や足を使用するレクリエーション、心理社会機能を賦活する集団運動プログラムを作成し、最長4間の縦断データにより総合的な効果検証をおこなう予定である。具体的な分析手順は以下の通りである。 ①認知機能推定式の妥当性の検討:前年度に開発した推定式の妥当性を交差妥当性、予測妥当性、基準関連妥当性の点から検討する。 ②短期間(3ヵ月間)の運動プログラムの実践効果の検討:3ヵ月間の短期教室を10か所で開催し、200名の高齢者について効果を明らかにする。 ③長期間(4年間)の運動プログラム継続効果の検討: 3ヵ月間の教室を卒業した者を運動サロン(自主的継続教室)に誘導し、最大4年間の継続効果を明らかにする。 ④4年間の縦断データに基づく認知症予防効果の検討:多項ロジスティック回帰分析により、認知症発症率のオッズ比を算出し、運動プログラムの有効性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)