2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650442
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 寿郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (80323020)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / 腸管免疫 / 核内受容体 / TLR |
Research Abstract |
慢性炎症性腸疾患は、食生活の欧米化に伴い急増しており、発症のメカニズム解明とよりよい治療法は急務である。また腸管内の免疫応答の異常が、I型糖尿病発症に大きく関与することがCoeliac病などの研究で明らかにされてきている。これまでに申請者は、免疫担当細胞であるマクロファージ系の細胞THP-1において、核内受容体PPARアゴニスト刺激下で免疫抑制受容体CD300aが誘導されること、およびCD300a欠損マウスが、慢性の腸炎を呈する端緒的な知見を得ており、本課題ではこのマウスの詳細なフェノタイプ解析、病因発症の解析、さらには腸管免疫異常とI型糖尿病発症との関連、PPAR刺激によるCD300aを介した腸炎の治療効果について研究する。またNODマウスを用い、食餌性由来の抗原による腸炎改善がI型糖尿病の発症を抑制できるかを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CD300a欠損マウスでは、リンパ菅炎とリンパ節炎を起こした。腹腔マクロファージのアレイ解析から、ノックアウトマウスではM1活性化マクロファージが高脂肪食の時に増えることが見いだされた。通常食では見られなかった。一方野生型マウスでは高脂肪食でM1マクロファージが増えることはなかった。一方M2マクロファージがむしろ増加し、Lyve-1の発現も増加していた。このことは、リンパ管が慢性炎症で破壊され、リモデリングがうまくいかないため、脂質の吸収障害が起こっていることが推察された。 さらに、腹腔マクロファージを単離した実験では、LPS処理によってTLR-4を刺激する実験を行った。3hの処理後、LPSを含まない培地で培養し、時間経過をおった。ノックアウトマウス由来マクロファージでは、LPSをwash outしたにもかかわらず、IL6の分泌が遷延し、24時間後には2h後の約3倍にまで亢進した。一方、野生型マウス由来マクロファージでの分泌は初期の2h値に留まっていた。 以上より、CD300aの欠損マウスでは、脂肪酸に対する過剰反応をしているか、あるいは、炎症の終結ができない状態にあることが示された。このことは、この分子がTLR下流のアダプター分子MyD88を介するシグナルの抑制を行っていることを意味する。 TLRが自然免疫の鍵となる受容体で、中でもTLR4が脂肪酸や、microbiotaの分解物などをリガンドとして、MyD88を介した経路でIL6を始めとしたケミカルメディエーターを誘導する。このことより、CD300aは炎症の終息を担う、あるいは、抗原刺激(TLRのリガンド刺激)を抑制し炎症をおさえる分子であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
CD300aがIL6を抑えるのはSHP-1を介したメカニズムが報告された。 CD300aが腸内細菌やその分解産物LPS(グラム陰性細菌の菌体成分でマクロファージなどの細胞に作用して炎症性サイトカイン・炎症性生理活性分子の産生を誘導)で、LPSに対する反応が顕著に増加している。このことは逆にCD300aを介したシグナルを強めて上げることによってMyD88を介した炎症・自然免疫の過剰反応を制御できる可能性がある。Non obese diabetes (NOD)マウスは自己免疫性の糖尿病モデルマウスである。MyD88を欠損させることで糖尿病の発症が全く抑制されることが報告されている。 そこで、CD300a発現を正に制御するPPARδの合成リガンドをNODマウスに投与することでI型糖尿病発症の解析を行う。もし抑制が認められたならば、CD300aからSHP-1へのシグナルMyD88経路が抑制されているかを解析する。 具体的にはNODマウス(n=50)を2群に分け、PPARδアゴニストGW501516およびvehicleコントロールをNODマウスに毎日投与する (3 mg/kg)。摂餌量、体重、血糖を測定する。この間、血糖250 mg/dlを超えたマウスは糖尿病発症と判定する。25週間経過を観察後、塗擦し、組織学的解析を行う。特に腸炎の回復の程度を観察する。糖尿病発症群とそうでない群と小腸のCD300aやPPARδのmRNA量を解析する。 組織解析では特にゴブレット細胞の消失や、絨毛の高さなどに注意する。小腸のトランスクリプトーム解析を行い、接着因子、炎症惹起サイトカイン、ケモカインの有無を見る。 血中脂質などのプロファイルを解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
NODマウスを購入し、PPARδ作動薬の投与実験の費用に充てる。糖尿病の発症の解析のため、血糖インスリン測定キットなど購入する。SHP-1リン酸化抗体などの購入により、MyD88経路が抑制されていることを解析する。マクロファージや小腸のトランスクリプトーム解析を行う。
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Research Products
(5 results)