2012 Fiscal Year Research-status Report
体内時計の活性化による成人性疾患の予防・治療法の開発
Project/Area Number |
24650446
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小柳 悟 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60330932)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生体リズム / 概日時計 / 活性化 / 老化 / 生活習慣病 |
Research Abstract |
加齢、老化に伴う体内時計の機能低下は糖尿病、がん、循環器障害など様々な成人性疾患の原因になることが指摘されている。しかしながら、時計機能を強化することで、これら疾患を予防または治療しようとする試みはない。これは体内時計の機能低下のメカニズムが不明であったこと。また、時計機能を回復させる有効な手段がなかったためである。本研究では申請者らが発見した体内時計の機能維持遺伝子(ATF4)を標的とし、老化によって低下した体内時計の機能を活性化させることで糖尿病、がん、循環器障害などの成人性疾患に対する新しい予防・治療法を開発することを目的とする。 本研究目的に則し、当該年度は人為的なATF4の発現変化が細胞機能にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。その結果、ATF4の発現量低下はDNAストレスに細胞のがん化に対しては抑制をかけるが、同時に細胞老化を誘導し易くすることが明らかになった。また同時にATF4の発現量低下は、生体リズムの発振に関わる主要な時計遺伝子の発現レベルも低下させることを培養細胞を用いた実験系で明らかにした。このことから、ATF4の発現量の低下は細胞レベルで「老化」と「体内時計の機能低下」を引き起こすことが示唆された。一方、過去の報告で種々の腫瘍細胞でATF4の発現量が増大していることが報告されている。我々の検討においてもDNAストレス負荷によって癌化した細胞内ではATF4の発現量が上昇していることが確認された。これらの結果から、ATF4は適切な量内で発現することで、細胞の正常状態の維持につとめていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、老化し体内時計の機能が低下した細胞にATF4をリズミックに発現する遺伝子ベクターを導入して、体内時計の機能拡幅を行うことを計画していた。しかしながら、概要にも示したように細胞を正常状態に維持するためのATF4の発現量には適正範囲が認められ、強制的な発現量の増加や低下は細胞の癌化・老化に原因になることが明らかになった。そこで、ベクターによる強制的な発現量コントロールではなく、低分子化合物によって間接的にATF4の発現量を正常範囲に維持する方策を模索した。その結果、ATF4の欠損細胞では種々のアミノ酸の含量が変化していることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
ATF4の欠損細胞では種々のアミノ酸の含量が変化していたことから、アミノ酸、ペプチド、およびその誘導体化合物に、ATF4の発現量をコントロールする働きをもつものがあることが考えられた。このことから今後はアミノ酸類似化合物を中心にATF4の発現量を正常範囲に維持する物質の探索を行っていく予定である。また、候補物質がいくつか同定できた段階で、各生活習慣病に罹患した老齢のモデルマウスに投与し、体内時計に及ぼす影響や、糖尿病、がん、高血圧等に対して抑制的に作用するか否かを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では老化モデルにおける生体リズムのモニタリングを簡便化するため、Per2-Luciferase遺伝子発現マウス(Per2::Luc ノックインマウス)を用いるが、その飼育管理費用および老齢性病態モデルの作成費用として50万円、一般試薬とて30万円、化合物スクリーニング費用として40万円(合計120万円)を使用する予定である。
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