2012 Fiscal Year Research-status Report
心筋梗塞の新規治療法開発のための心臓の胎仔創傷治癒機構の解明
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24650447
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
今 淳 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (60271798)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 胎仔創傷治癒 / 心臓 / 心筋梗塞 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
胎仔創傷治癒機構は,胎児のある時期にどの様なひどい損傷を受けても瘢痕を全く形成せずに再生できる機構であり,既に皮膚において確認されている。このことを踏まえ,本研究では,胎仔の心臓にも皮膚と同様の胎仔創傷治癒機構が存在するのかを解析した。実体顕微鏡下に胎生14日目~新生仔までに各胎生期のマウスの心臓を摘出し,切開傷を施した後に器官培養を行った。その後顕微鏡下での肉眼的観察及び病理組織学的解析から,瘢痕を形成しない心筋の再生の有無について検索した。その結果,胎仔期には完全では無かったが,瘢痕形成が抑制されて再生する傾向の時期が実際に存在することが観察され,胎仔創傷治癒機構は心臓にも存在すると予想された。この機構は母体内にいるうちに転換期を迎えて消失し,再生されない通常の成獣創傷治癒機構の時期に至り,そして出生することが明らかになった。そこで次に転換期の前後の胎仔心臓(心内膜,心筋,心外膜)で発現している遺伝子の網羅的解析をマイクロアレーによって解析し,胎仔創傷治癒機構の転換期で著明に変動する多数の遺伝子を検出した。その結果,特筆すべきものとして,瘢痕形成を抑制するヒアルロン酸の分解酵素であるヒアルロニダーゼ,瘢痕の原因であるI型コラーゲン,アクチンの各遺伝子は胎仔創傷治癒機構が存在する時期に減少していた。コラーゲン分解酵素は上昇するものが多く,瘢痕に関わるサイトカインTGF-betaや,その他toll-like recdeptor,シクロオキシゲナーゼの各分子種の遺伝子発現が促進傾向を認めた。以上から,ヒアルロン酸は瘢痕形成の抑制,コラーゲンは瘢痕形成を促進することから,胎仔の心臓においても胎仔創傷治癒機構,即ち瘢痕形成を生じない再生機構が存在すると考えられた。今後,検出した各種遺伝子を成獣の心臓に注入し,瘢痕を形成しないで心筋が再生されるかを解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究経過にそって研究が進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は心臓の胎仔創傷治癒機構の大元締めとなるマスター遺伝子の同定を今後行う予定である。具体的には,平成24年度の網羅的解析で同定した心臓の胎児創傷治癒機構の転換期前後に著明に変動した遺伝子の挿入された発現ベクターを構築し,これを成獣マウスの損傷を認めて瘢痕形成を来した心臓に注入し,瘢痕を形成せずに心筋が再生され得るかを検索し,マスター遺伝子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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