2013 Fiscal Year Research-status Report
アパレル水系洗浄プロセスへの大気圧プラズマ処理の導入
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24650467
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
後藤 景子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (30243356)
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Keywords | 大気圧プラズマ / 人工汚染布 / 洗浄性 / 再汚染 / 殺菌性 / 布の黄変 / 引張強伸度 / 変退色 |
Research Abstract |
水系洗浄の前処理として非平衡大気圧プラズマジェットを利用する試みについて、洗浄効果や衣服への影響について実用化を視野に入れて実験的検証を行った。 モデル汚れとしてカーボンブラック、オレイン酸またはステアリン酸を各種繊維からなる平織布に付着させて人工汚染布を作製し, 大気圧プラズマジェット処理を行った。各種洗浄水溶液中に人工汚染布と原白布を入れ、機械力無、または機械力(超音波および振とう)を与えて洗浄を行った。洗浄前後の布の表面反射率を測定して汚れの脱離性と再付着性を評価した。これらのビーカーを用いた洗浄実験に加えて, 実用系での効果を調べるため, ISO標準ドラム型洗浄機を用いた洗浄実験も行った. いずれの洗浄条件でも疎水性の大きい繊維や汚れでは、洗浄前のプラズマ処理により汚れの除去が促進され, 再付着が抑制される結果が得られた. この原因はプラズマ処理により繊維表面や汚れが親水化され, 洗浄媒体である水にぬれやすくなって洗浄が有利になったためと考えられる.また, 布に菌を付着させたのちプラズマ処理を行い, 生菌数を調べる方法で殺菌効果を検討したところ、滅菌作用が確認され, 洗浄前のプラズマ照射は汚れ除去とともに菌の繁殖や臭いの発生を抑えて, 衣服の清潔を維持できることが示唆された.さらに, プラズマジェット処理による布の損傷の有無を調べるため, 処理前後の表面反射スペクトルや引張強伸度を測定したところ、布の損傷は殆どなかった。また、原白布を染色してプラズマ照射を行ったが、変退色は認められなかった。 以上の結果から、水洗濯の前処理としての大気圧プラズマ処理の実用化が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種布を用いた実用系試験でも水系洗浄の前処理としてのプラズマ処理効果が確認できた.さらに抗菌試験やプラズマ処理による布の損傷評価も行い、水系洗浄の前処理としてのプラズマ処理の有効性が示された.研究成果は既に学会発表を終え、さらに学術雑誌に論文として掲載されており、洗浄実験データの集積と解析、公表が順調に遂行している.
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Strategy for Future Research Activity |
水系洗浄の前処理としての大気圧プラズマ処理の有効性をさらに検証するために、ナノレベルで汚れの付着重量の測定が可能な水晶振動子を用いてモデル洗浄系を構築し、洗浄実験を行う。水晶振動子へのモデル油汚れの付着は分子レベルで配向制御が可能なラングミュアーブロジェット法で行う。基質への汚れの付着前後、プラズマ処理前後および洗浄前後の水晶振動子の周波数から汚れの付着重量を定量して洗浄性を評価し、プラズマ処理効果の信頼性を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は海外調査・および成果発表のための旅費枠(スペイン・7泊)を計上していたが、別の経費で出張旅費を捻出したため、未使用額が発生した。 前年度の未使用額を合わせてモデル洗浄系を構築するための水晶振動子計測システムのバージョンアップをはかる。すなわち、汚れ付着量をより精度よく追跡するため、粘弾性変化を測定して周波数変化を補正するオプションを導入する。
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