2012 Fiscal Year Annual Research Report
人類は感覚の「慣れ」により暑熱環境へ適応することが可能か?
Project/Area Number |
24650469
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
栃原 裕 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (50095907)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 気候変動 / 人間生活環境 / 暑熱環境 / 適応 / 慣れ |
Research Abstract |
本研究では、熱帯出生者7名と温帯出生者11名の1年間(4月、7月、11月、2月)4回にわたる温冷覚閾値の出生地域差と季節差を明らかにすることにより、皮膚温度感受性に出生地域と季節変動が及ぼす影響について検討を行った。 温冷覚閾値の出生地域差に関しては、全ての季節において多くの部位および平均温冷覚閾値で有意な差が認められ、温帯出生者と比較して熱帯出生者の温覚閾値は高値を、冷覚閾値は低値を示した。この結果から、熱帯出生者は温覚、冷覚ともに温帯出生者よりも皮膚温度感受性が低いことが示された。さらに、熱帯出生者の温冷覚閾値と日本への滞在期間との間に相関関係は認められず、皮膚温度感受性の脱順化は約4年以内では見られないという結果が示された。 また、温冷覚閾値の季節変動に関しては温帯出生者のみに季節間での有意差が認められ、特に夏期の冷覚自覚皮膚温が高値を示した。このことから、温帯出生者は夏期に高い冷感感受性を示すことが示唆された。熱帯出生者には温冷覚閾値の季節差は認められず、皮膚温度感受性の季節変動による影響が見られなかった。 出生地域によって皮膚温度感受性が異なる要因の一つとして、熱帯出生者の長期の暑熱環境への暴露が温度受容の末梢器官である皮膚温度受容器および神経伝達性に影響を与えた可能性が考えられる。また、熱帯出生者は皮膚温度感受性の脱順化と季節変動による影響を示さなかったことから、皮膚温度感受性は出生地域の環境的要因に影響を受ける可能性が考えられる。熱帯出生者の皮膚温度感受性に季節差が認められなかった要因の一つとしては、熱帯出生者は暑熱順化により皮膚温度感受性が低いという温帯出生者とは異なる特性をもつために、季節変動の影響を示さなかった可能性が考えられる。
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Research Products
(2 results)