2012 Fiscal Year Research-status Report
家庭内衣服行動の変容から考える現代の家族・生活の研究
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24650472
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Research Institution | Tokyo Kasei Gakuin University |
Principal Investigator |
山村 明子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (60279958)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 衣生活 / 家庭 / 家族 / エプロン |
Research Abstract |
家庭で着用される衣服のカテゴリーには、くつろぎ用、就寝用、家庭内労働用の衣服、などが挙げられる。本研究では家庭の中の衣生活について着用者の家族関係、ライフスタイルなどとの関連性において検討し、その変容から、日本の家庭生活の中で希薄となった家族関係、無秩序化した生活空間、生活時間の多様性など、家族・家庭の在り方を明らかにする。24年度には主婦の家庭内労働の衣服としてエプロンを取り上げた。 主な資料として『暮しの手帖』(暮しの手帖社発行)を中心に検証するとともに、あわせて「主婦連便り」、朝日新聞データベースなどから第二次世界大戦後の家庭生活におけるエプロンの着用実態や主婦の在り方を検証した。 和装から洋装への変化に伴い、家庭内労働用の衣服は割烹着からエプロンへとその主流は変化した。戦後の家庭においては家事に携わる主婦は日常的にそれらを着用していた。さらに、家事の場面に限らず、家庭内でのくつろぎの場面、気晴らしの場面においてもそれらは着用されていた。また、家庭外におけるエプロンの着用からは、当時の地域コミュニティと家庭との密接な関係性が明らかになる。この時点ではエプロンは労働着というカテゴリーには必ずしも属していない。しかし、80年代以降その姿は減少した。これは家事労働の軽減・外注化が進み、エプロン等を着用する必然性も減少したことは一因である。それとともに、エプロンが持つ女性的アイコンに対するジェンダー観に対する意識の変化も指摘できる。1950年代にはエプロンが主婦の美徳の象徴として、エプロンをする姿を「美しい」と形容した。しかし、近年にはそのような意識は見られなくなる。女性の家事労働が前提であるエプロンは、その女性性が強調され、それを否定するために、姿を消す要因になった。一方で、家庭内での男女協同が前提となったエプロンは、家族の親和性を高めることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度には主婦の家庭内労働の衣服としてエプロンを取り上げた。 家庭用実用雑誌の中でも主に『暮しの手帖』(暮しの手帖社発行)を中心に検証するとともに、あわせて「主婦連便り」から第二次世界大戦後の家庭生活におけるエプロンの着用実態や主婦の在り方を検証した。その他に寝衣の変化についても、「主婦と生活」をもとに検証中である。 家庭内の衣生活の要素が幅が広い点、また、調査対象として予定した資料数も膨大であり、調査に時間を要する。そのため、調査対象資料に関しては再検討を要すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
調査資料を厳選して、さらに家庭内衣服についての調査を進める。また、2000年代の繊研新聞のCD-ROMの資料から今日のアパレル産業における家庭内衣服の消費動向を検討する。 調査結果の整理、分析をし、家庭における衣生活の変容を明らかにする。それと同時に、21世紀の家族・家庭生活の在り方に対する衣生活からの提言を導きだすことが、平成25年度の大きな課題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査結果の整理、分析のために昨年度に引き続き、繊研新聞CD-ROMなどの資料の収集を行う。また、成果成果を公表するための、報告書の作成などを行う。
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Research Products
(1 results)