2013 Fiscal Year Annual Research Report
嚥下困難者に対応した固体膨化食品の創製に向けての食塊の力学・界面物性の制御
Project/Area Number |
24650477
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
三浦 靖 岩手大学, 農学部, 教授 (50261459)
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Keywords | 食品 / 咀嚼 / 嚥下 / 力学物性 / 界面物性 / レオロジー / トライボロジー / 界面科学 |
Research Abstract |
食品の唾液に対する濡れ性,唾液吸収挙動と凝集性・崩壊性,口腔・食道粘膜上での食塊の付着・摩擦・変形・流動を乳化剤により制御して,嚥下困難者が喫食可能な固体膨化食品を調製することを目的にした。乳化剤(デカグリセリンステアリン酸エステル(PoGES),グリセリンステアリン酸モノエステル(GMS)を対小麦粉0.25,1.00%(w/w)で添加してケーキ・マフィン様の固体膨化モデル食品を調製した。PoGES10(HLB値10)とGMSには内相の水分保持機能があった。乳化剤を添加により見掛け密度が減少した。内相の硬さは,乳化剤添加により焼成3日後でもその増加が抑制された。内相縦断面の気孔数がPoGES9,PoGES10やGMSの添加により増加した。気泡壁の表面状態は乳化剤添加により変化しなかった。乳化剤添加により人工唾液に対する動的接触角が低下して濡れ性が増加し,人工唾液吸収量が若干増加した。固体膨化モデル食品が最も膨潤するのは咀嚼中であり,嚥下の際には食塊の膨潤はほとんど見られないと考えられた。PoGES10やGMSの添加により固体膨化モデル食品の崩壊力が低下し,人工食塊の硬さと圧縮エネルギーが減少した。乳化剤添加は,人工食塊の動摩擦係数に影響を及ぼさなかった。固体膨化モデル食品は,唾液を十分に吸収して食塊を形成することで嚥下困難者用食品に求められる弱いゲル型を示した。食塊の咽頭部での最大流速は,水>ヨーグルト>ケーキ・マフィンであり,誤嚥しにくいといわれているヨーグルトの流速に最も近かったのがPoGES(HLB値10)添加試料であった。健常人の官能評価ではGMS添加試料が柔らかく,口中で崩壊しやすく,嚥下時の抵抗が少ないと評価された。嚥下しやすい食塊の要件は,適切な付着性,凝集性,柔らかさであり,今後は加工デンプンや多糖類と乳化剤の併用によりこれを制御する検討を行う。
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