2012 Fiscal Year Research-status Report
うま味成分による味覚受容体発現の調節―味覚異常患者用治療食への応用―
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24650489
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
堤 理恵 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80510172)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 味覚異常 / がん |
Research Abstract |
本年度はまず、ヒトの舌上にある味覚受容体発現を定量化する方法を確立した。舌の葉状乳頭を擦過してこれをRNAlaterにて安定化し、キットを用いてRNAを抽出した。次に少量のRNAをcDNAに増幅し、リアルタイムPCR法にて定量した。健常人のサンプルにおいては、20歳代学生と60歳以上の高齢者で味覚受容体発現量に有意な差がみとめられた。次に頭頸部癌患者における受容体発現を検討したところ、化学療法開始時と比較して、治療中にうま味受容体および甘味受容体に共通するT1R3の発現量が減少した。一方で、甘味受容体のT1R2、うま味受容体のT1R1には発現量に変化がなかった。さらに、苦味受容体を構成するT2R5は化学療法時に増加する傾向が認められた。 このことから、うま味、甘味の付加が患者の味覚に有効である可能性が考えられ、うま味成分であるMSG(グルタミン酸ナトリウム)を毎食0.9g付加したところ、食事量が増加しただけでなく、T1R3えらの発現量の増加がみとめられた。MSGが受容体発現をupregulationしている可能性を踏まえ現在そのメカニズムを検討している。また、グルタミン酸センサーを用いて食事中のグルタミン酸測定を行ったところ、患者が食べやすいものにはグルタミン酸が多いこともわかった。さらに患者に対してQOL調査、食事調査、味覚調査をおこなっており、こうしたうま味が食事量や患者の回復に関係しているのか、あるいは味覚調査と味覚受容体発現は一致しているのかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究そのものは思った以上の成果を出すことができ、MSGによって受容体の発現増加が認められたことは大きな発見であると思われる。ただし、患者の介入数が現在までに40例と多くはなく、さらなるN数の増加が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトの舌上の味覚受容体発現の定量方法、味覚検査の方法(全口腔法)、患者への聞き取り調査などの方法はほぼ確立できた。今後、患者数を増やしながら、これらの方法の妥当性を明らかにしていく。また、治療食の開発に向けて、患者にとって適切なうま味、グルタミン酸の濃度、テクスチャーの検討を行い、味覚異常に対して有効かつ、栄養価の高い食品を開発していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きリアルタイムPCRに必要な消耗品などが必要である。また、食品開発に向けて市販食品の購入、データ解析用のソフトウェアの購入などが必要となる。次年度使用額はリアルタイム試薬、食品購入、データ解析などに使用する。
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Research Products
(1 results)