2012 Fiscal Year Research-status Report
正確な健康情報を提供するための難消化性オリゴ糖量の高精度評価法に関する研究
Project/Area Number |
24650498
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
田辺 賢一 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (60585727)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥 恒行 長崎県立大学, 看護栄養学部, 名誉教授 (50010096)
中村 禎子 長崎県立大学, 看護栄養学部, 助教 (60382438)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 難消化性糖質 / 難消化性オリゴ糖 / 食物繊維 / 分析化学 / 糖アルコール |
Research Abstract |
本研究の最終目的は、加工食品成分に関する正確な健康情報を消費者へ提供するために、難消化性オリゴ糖の高精度定量法を確立することである。本研究では、難消化性オリゴ糖定量法であるAOAC公定法の酵素-HPLC法に用いられているアミログルコシダーゼの替りにブタ小腸粘膜酵素を用いることを基本にして加水分解システムを構築し、改良定量法を確立する。そのため、平成24年度ではブタ小腸粘膜から低分子糖質に対する消化酵素の大量単離・調製を試みた。また、ブタ小腸粘膜消化酵素およびヒト小腸粘膜消化酵素を用いて各種オリゴ糖に対する水解性を比較・検討した。 ブタ小腸粘膜刷子縁膜をパパイン処理してニ糖類水解酵素を可溶化し、部分精製を試みた。しかし、パパインを用いて可溶化したブタ小腸粘膜部分精製酵素は、その調製に多大な時間を要するにも拘らず酵素比活性は期待するほど上昇しなかった。そのため、今後もブタ小腸粘膜からの糖質消化酵素の大量単離・調製方法については検討する必要がある。ブタならびにヒト小腸粘膜酵素を用いて難消化性糖質のin vitro水解実験をした結果、フラクトオリゴ糖、難消化性デキストリンならびにガラクトシルスクロースの水解性に顕著な差異は観察されなかった。また、β-ガラクシド結合を持つラクチュロース、ガラクトオリゴ糖およびセロビオースの水解性もヒトと比較して同程度であった。すなわち、ブタ小腸粘膜酵素はヒトのそれと同様に難消化性糖質をきわめて水解しにくいことが明らかになった。さらに、ヒトならびにブタ小腸粘膜の各二糖類水解酵素活性の類似性について比較・検討した。ヒトおよびブタ小腸粘膜二糖類水解酵素の相対比活性は類似していた。ブタならびにヒト小腸粘膜酵素は比較的に相同性が高く、難消化性オリゴ糖の高精度定量法に適していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実験計画において予定していたブタ小腸粘膜消化酵素およびヒト小腸粘膜消化酵素を用いて各種オリゴ糖に対する消化性の比較・検討は概ね期待する結果を得ることができた。一方、ブタ小腸粘膜からの糖質消化酵素の大量単離・調製については検討した精製法では期待した結果は得られなかった。しかし、平成25年度ならびに平成26年度まで継続して実施する実験と位置付けている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究結果からブタとヒトの小腸粘膜消化酵素の相同性が高いことを証明し、難消化性オリゴ糖の高精度定量法に用いる消化酵素として適していることが示唆された。そのため、平成25年度は難消化性オリゴ糖定量法に添加する酵素量を決定することを目的に研究を進める。 申請者が提案する難消化性オリゴ糖の新規高精度定量法は既存のAOAC公定法の定量原理を基にしてその酵素処理システムを構築する。そのため、まず始めに現公定法の問題点について、特に、我々が以前より問題視していた低分子糖質消化酵素に着目して問題点を明らかにする。その問題点を踏まえ、ブタ小腸粘膜酵素を用いた加水分解過程を検討し、高精度定量法の酵素処理システムを構築する。 また、申請者が提案する高精度難消化性オリゴ糖定量法は、消化性糖質が完全に水解され、難消化性オリゴ糖のみが定量されることが必須になる。そのため、ブタ小腸粘膜酵素のα-グルコシダーゼのunit量は、食品への使用頻度が高いスクロース、可溶性デンプンなどを用いて、それらがHPLCの検出限界以下まで水解される酵素量を検討する。各酵素添加量が決定後、高精度定量法を用いて難消化性オリゴ糖を定量した結果とin vitro水解実験の結果を比較し、どの程度の誤差が生じるかを慎重に評価する。また、この結果を参考にしてα-グルコシダーゼのunit量の添加量の微調整を行い、より精度が高い定量法の開発を試みる。さらに、ブタ小腸粘膜二糖類水解酵素の比活性が高い酵素精製法を粘膜からの可溶化に加え、アフィニティークロマトグラフなどを用いて再検討する。 平成26年度は、平成25年度の研究成果によって、難消化性オリゴ糖の高精度定量法の酵素処理システムが構築できたならば、特定保健用食品を始めとした市販食品や、天然食品を用いて高精度定量法の定量結果の妥当性を評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度ではブタ小腸粘膜から二糖類水解酵素を部分精製した酵素の大量調製までは至らなかった。平成25年度では酵素の精製方法の再検討を行い、さらに、精製した酵素の大量調製を効率よく実施するため、大型カラムならびに樹脂を購入する計画を立案している。
|
Research Products
(2 results)