2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650500
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
佐塚 正樹 常磐大学, 人間科学部, 准教授 (60305852)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 濃厚流動食 / 凝集 / 固化 |
Research Abstract |
1)顕微鏡観察による濃厚流動食の凝集観察 本年度は市販されている幾つかの濃厚流動食を対象に主に顕微鏡観察による流動食の凝集を観察することを行ったが,顕微鏡下での凝集像は見られたものの,実際には流動食の固化が起きていないことが明らかになった.すなわち,臨床現場で問題にされている流動食の固化(凝集)はほとんど起きない可能性が考えられた.一方,乳酸菌飲料と流動食を混合すると明らかな凝集が起きて顕微鏡下で沈殿現象が見られた. 2)プラスチックガートルボトルやカンガルー™ コントロール フィーディング ポンプ 624型を使用した濃厚流動食の流動実験 1)を受けてこれまで,固化(凝集)が起きる可能性から混合使用を避けてきた濃厚流動食についてプラスチックガートルボトルやカンガルー™ コントロール フィーディング ポンプ 624型を使用した濃厚流動食の流動実験を実施した.これは,濃厚流動食の混合使用が可能なら,臨床現場での栄養投与に非常に有益であることが明らかとなった(寒河江豊昭,佐塚正樹他,経腸栄養法におけるNPC/N比とC/N比を用いてタンパク質量を算定する方法,全国精神科栄養士協議会雑誌,8,26-28,2013)からで,実際の機器を用いた流動実験を行って固化(凝集)が起きないことを明らかにするとともに上述の1)の実験内容を補完するものであった.その結果,混合した濃厚流動食はまったく問題なく流動し,実際の現場で濃厚流動食の混合投与が可能であると考えられた.本研究の結果は第56回日本腎臓学会学術総会で発表予定である(佐塚正樹,寒河江豊昭,ある種の流動食の混合使用は可能であることの証明,2013年5月19日,東京フォーラム).以上のように本年度の研究では(学会発表と今後の研究を進める上で),濃厚流動食の性質についての幾つかの有用な知見を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように,これまで固化(凝集・沈殿)を起こすと考えられた濃厚流動食の混合は一部の市販商品については全く問題ないことが顕微鏡観察・流動実験で明らかとなり,その結果として臨床現場での流動食の利用が飛躍的に発展する可能性が出てきた. 本研究の当初の目的は混合すると固まってしまうとされた流動食を混合できるようにあらかじめ消化してしまうことを念頭に研究を進めようとしたが,一部の商品とは言えそのような問題が起きないことが明らかにできたことは(いささか拍子抜けではあるが)かえって栄養投与を受ける人々には朗報である. 一方で本年度,プロバイオティクスとして有用とされる乳酸菌飲料は流動食と同時投与(混合投与)ができないことも発見した.これは,流動食を実際に用意する看護側にとっては非常に手間のかかる大問題であり,この解決は早急に行う必要がある.乳酸菌による流動食の固化の原因は①乳酸によるpH低下によるタンパク質変性②乳酸菌もしくはその代謝物による流動食中成分の凝集にあると推定している. 本年度は以上のような臨床現場にとって有用な知見を得ており,今後の濃厚流動食の有用な使用法や特定保健用食品としても最も信頼できる商品の一つである乳酸菌飲料の使用法の改善など,来年度に向けて,さらに研究を進める足場ができたと考えている.また,来年度はさらに多くの濃厚流動食について混合・流動(観察)実験を行い,臨床現場に有用な基礎的なデータを積み上げようと考えている. 以上のことから現在までの達成度としては「(2)おおむね順調に進展している」と自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要と現在までの達成度で述べたように,幾つかの有用な知見が得られたので,採択された研究内容を行いつつも研究目的にあった研究を進める予定である.すなわち,本研究目的の概要「本研究は,固化を起こさない流動食の安全な提供により,流動食の使用方法を飛躍的に発展させ,患者の栄養および傷病状改善に資する研究である」ということに基づいて①市販濃厚流動食の混合実験(顕微鏡観察・流動実験)と固化の原因究明②乳酸菌飲料混合流動食の消化実験と固化の原因究明,オプションとして③可能ならば,新しい濃厚流動食の開発に関しての有用な実験などを展開していきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,臨床現場で混合使用を行いたい流動食として最も優先順位の高い部類の濃厚流動食について予想外(混合して固まるとされたものが固まらなかった)の結果が得られた.よってその後の「(その混合使用したい)濃厚流動食は混合使用ができる」ということを証明するための実験に集中したので当初より予算を使わずに済んだ. 次年度の予算は「今後の研究の推進方策」にも述べたように市販濃厚流動食の混合試験や乳酸菌飲料混合流動食の消化実験も進めるので本年度の持ち越した予算を有用に使用したいと考える.
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