2014 Fiscal Year Research-status Report
加齢および炎症性腸疾患におけるアミノ酸トランスポーターとプロスタグランジンの役割
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24650501
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
伴塲 裕巳 埼玉医科大学, 保健医療学部, 講師 (80453447)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アミノ酸トランスポーター / LAT1 / プロスタグランジン / 腸上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにアミノ酸トランスポーター(LAT1)のタンパク質レベルにおける発現結果に明確な結果は、得られなかった。この結果の原因として、ヒト大腸癌細胞を用いたこととプロスタグランジン(PG)刺激時の培養条件が牛胎児血清(FBS)1%の条件であったことが挙げられた。昨年度において正常ヒト小腸上皮細胞での検討を試みたが困難であったため、H26年度はヒト大腸癌細胞株での検討に戻した。タンパク質レベルでの検討が正しいのか否かを検証するため、培養上清中に残存するアミノ酸の分析を詳細に行なった。 腸上皮細胞モデルとしては、HT-29細胞株を用いて0.1%牛血清アルブミン(BSA)レベルでのPG刺激時に対する影響をアミノ酸分析にて検討した。アミノ酸分析には島津製作所製LC-10AD-VP-HPLCシステムにより構築されたものを用いた。PGはPGE1を用い、刺激時間は24時間とした。解析を行なったアミノ酸はタンパク質を構成する20種類のアミノ酸である。 増減の解析に耐えうる量の培養上清中のアミノ酸は、プロリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸であった。アスパラギンとグルタミン酸は分離が悪く、両者の総量で増減を検討した。PGE1非刺激時の残存アミノ酸量とPGE1刺激時の残存アミノ酸量からアミノ酸の取り込み状況の変化を比較検討したものの顕著な変化は現れなかった。アミノ酸分析の結果解析を検討したのはPGE1のみで他のPGの影響については、現在検討中であるが、現時点では、HT29細胞株においてはPGE1がアミノ酸取り込みに関して直接的な影響を与える傾向は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
PGによるアミノ酸トランスポーターのタンパク質レベルの発現において明確な結果が得られなかった為、Western blottingによるタンパク質レベルでの検討が正しいのか否かを検証する必要があると考えた。そこでH26年度はPG以外の影響を少なくするために刺激条件を変えて、まずは培養上清中におけるアミノ酸変動の検討に変更した。アミノ酸分析には島津製作所製LC-10AD-VP-HPLCシステムにより構築されたものを用いたが、分析に耐えうるサンプルの前処理条件を設定するために、多くの時間を要した。また、1サンプル当たりの分析時間が長く、サンプル数も多いため、培養上清中に残存するアミノ酸変動についてその端緒となる確実なdataを得るまでには至らないでいる。そのため、PGとアミノ酸トランスポーターとの因果関係を明らかにする発展的な解析(当初予定していた動物実験等)が出来ずに停滞している。
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Strategy for Future Research Activity |
解析中である培養上清中のアミノ酸変動の対策としてアミノ酸変動を認めない場合と認めた場合の二つの方向性を考えている。 一つは、PGとアミノ酸トランスポーターに因果関係が認められない可能性があるので、その証拠固めを行なっていく方針である。結果の解析中である培養上清中のアミノ酸変動に同じように大きな変化が認められなければ、0.1%BSA条件下でのPG刺激実験を行ない、アミノ酸トランスポーターのWestern blottingによるタンパク発現とRT-PCRもしくはReal-time RT-PCR法にてmRNA発現レベルを検討することによって、PGの影響を再確認する。 また、PGが直接的に影響を与えないのであれば、その次の可能性としてPGが産生を惹起するサイトカインによるアミノ酸トランスポーターの影響をタンパク質レベル、mRNAレベルで検討する。 二つ目は、PGとアミノ酸トランスポーターに因果関係が認められるような変動を認められれば、腸上皮細胞モデルをより正常腸上皮細胞に近づけるため、Corning (旧Falcon)社の腸上皮細胞分化エンバイロメントを利用しアミノ酸トランスポーターの影響をタンパク質レベル、mRNAレベルで検討する。
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Causes of Carryover |
申請当初の予想と異なり、PGとアミノ酸トランスポーター発現との間に大きな因果関係が認められない。Western blottingによるタンパク質レベルでの検討が正しいのか否かを検証する必要があるため、培養上清中のアミノ酸分析を進めた。中央研究施設所有のカラムを借用できたため、高額なカラムの購入を控えることが出来た。また、アミノ酸分析に時間を要してしまい、RT-PCRやReal-time RT-PCR法および動物実験を導入するだけの根拠となるdataが不足してしまった。よってこれらの実験の遂行が出来なかった分、Western blotting用抗体、PCR用プライマー、実験動物および免疫組織化学染色用の抗体を購入しなかったため、費用の使用が限られてしまった。また、導入予定であった腸上皮細胞分化エンバイロメントも購入できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アミノ酸解析用カラムを借用していたが、カラムの劣化を認めらるので代替品の購入に充てる。また、現在進めているアミノ酸分析の結果を基に、同一腸上皮細胞モデルにおける同刺激条件下でのアミノ酸トランスポーターのWestern blottingによるタンパク発現とRT-PCRもしくはReal-time RT-PCR法にてmRNA発現レベルを検討するため、抗体やプライマーなどの購入をする。 更にH26年度に達成できなかったCorning社の腸上皮細胞分化エンバイロメントの導入を進め、導入を機に現在不調であるCO2-incubatorの一新にも未使用額の一部を充てる予定である。
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