2012 Fiscal Year Research-status Report
機能性栄養素のアポ蛋白B48転写、合成、代謝に与える影響
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24650503
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
松島 照彦 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (60199792)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アポタンパクB48 / レスベラトロール / ゲニステイン / クルクミン / カイロミクロン / トリグリセライド / 食後高脂血症 / 動脈硬化 |
Research Abstract |
機能性栄養素、食品が脂質代謝、脂質異常に与える影響を検討することを目的に、B48など脂質代謝蛋白に対するこれら栄養成分の作用を腸管細胞において観察し、細胞生物学的に解析を行った。 ヒト大腸ガン由来腸管細胞株Caco2を多孔性膜を有する二重底ディシュ上に培養し、吸収上皮様の極性培養系を作成した。培地に脂質ミセルおよび検討する種々の食品成分、栄養素などを加えて細胞に吸収させ、基底膜側へのカイロミクロンの分泌を検討した。ApoB48の測定は申請者らが開発したELISA系を用い、トリグリセライドの測定は酵素方を用いた。 ApoB48の測定の結果、ワインポリフェノールであるレスベラトールは20μM、80μM、140μM、200μM添加においてコントロールに比べ、各々26.3%、43.8%、69.6%、78.8% ApoB48の分泌を減少させた。大豆イソフラボンであるゲニステインは20μM、80μM、140μM、200μM添加により各々19.6%、40.1%、52.6%、53.3% 減少させ、ターメリックのスパイス成分であるクルクミンは20μM、80μM、140μM、200μMの添加では各々35.4%、69.1%、78.5%、93.8%減少させた。また、トリグリセライド測定では、レスベラトールとゲニステインの各濃度ともコントロールに比べ変化はみられず、一方、クルクミンは20μMと80μMではコントロールと比べ差はなかったが、140μM、200μMでは各々65.7%、100%の減少がみられた。 ApoB48はカイロミクロンの1粒子に1分子存在しているので、トリグリセライドの変化に比較してApoB48の分泌の減少が大きかったことは、1粒子のサイズが大型化している一方、粒子数が減少していることを示唆した。カイロミクロンレムナント粒子の減少は、動脈硬化の抑制につながると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、申請者らが開発したApoB48モノクローナル抗体を用いたのELISA系であるが、これは当初、臨床検査を目的としたものであったが、これを培養系の腸管細胞に応用することができ、細胞からのapoB48の分泌を培地中で検知し得たことは大きな成果であった。次に、これを用いてポリフェノール類をはじめとして約30種類の栄養素、食品成分を網羅的に調査し、この内、実績の概要に記した3食品成分をはじめ、いくつかの栄養素、食品成分でapoB48の分泌に変化があることを発見した。この内、上記3成分では、明確な用量依存性がみられ、一方、トリグリセライドの分泌量には大きな変化がなく「脂肪-タンパク乖離」の状態があることを発見することができた。このことは実績の概要に記したように分泌されたカイロミクロンの粒子数の減少を意味しているとともに、当初、apoB48の増減は脂肪の吸収と分泌に依存していると考えられていたものが、apoB48タンパク質独自の調節を受けていることが示唆されたことになる。実績の概要には記していないが、すでにリアルタイムPCRを用いて腸管細胞の脂質代謝関連タンパクの遺伝子転写調節の解析に着手して、解析が行えることを確認しているので、大きな進展が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は腸管からの脂質吸収、回路ミクロン分泌に対する種々の栄養、食品成分が与える影響について、腸管細胞の脂質代謝関連タンパクの遺伝子転写調節の解析を中心にして行う。すでに、リアルタイムPCRを用いて、これらの内、apoB、apobec、apoai、soac1、fabpi、npc1l1、mttpについて測定系を確立した。まず、apoB48の分泌抑制がみられたresveratrol, curcumin, genisteinについて、転写レベルの影響を観察し、いかなる機序で分泌抑制を来すかを解析する。カイロミクロン粒子数の減少につながるapoB48の減少は①apob転写の減少、②APOBECの減少によるapoB48mRNAの減少、③apoB48の分解の亢進、の可能性があげられるが、いずれによるかを明らかにすることができる。 次に、家兎の個体または反転腸管を用いて、これらの栄養素、食品成分が組織、個体レベルでカイロミクロン分泌に与える影響を観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度は、遺伝子解析を中心に行うので、PCRに用いるプライマー、ブローブおよび酵素、発光試薬などの試薬類の費用が多くなる。また、引き続き、細胞培養用の試薬類が必要である。動物実験への進展があれば、動物および飼育の費用が必要となる。
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