2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650504
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Research Institution | Kagawa Nutrition University |
Principal Investigator |
平石 さゆり 女子栄養大学, 付置研究所, 助教 (20150659)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 栄養学 / 概日リズム / 癌転移 / 食生活 |
Research Abstract |
1.食餌摂取時刻がメラノーマ癌細胞のマウス肺転移に及ぼす影響 野生型マウスと、時計遺伝子clockの変異マウス(clock変異マウス)を各々、マウスが通常行動する暗期に食餌摂取する夜給餌群と、休息時刻である明期12時間の内11:00~17:00に制限して餌を与える昼給餌群に分け、普通食を8週間与えた。給餌開始から6週目にマウスメラノーマ細胞を尾静脈内投与し、8週目に解剖して肺への転移癌結節数を計測した。その結果、野生型マウスの夜給餌群に比べ、野生型マウスの昼給餌群及びclock変異マウスの昼夜両群の転移癌結節数は多かった。 2.マウスの食餌摂取時刻が時計遺伝子および癌の転移に関わる接着因子の発現に及ぼす影響 同様に昼あるいは夜に給餌して、7週目に癌細胞を投与し、その4日後の8:00から6時間毎に肺を採取してRNAを単離回収し、時計遺伝子および癌転移関連因子のmRNA量の変化をRT-PCR法で検討した。野生型マウスの時計遺伝子per-2とbmal-1は癌投与、非投与群ともに夜給餌群に対して昼給餌群で6~12時間位相が前進した。clock変異マウスでは何れの群も時計遺伝子の発現に一定のリズムは見られなかった。接着因子vcam-1、P-セレクチン、E-セレクチンの発現は何れの場合も日内リズムがほとんどみられなかったが、癌非投与群ではvcam-1及びP-セレクチンmRNA量が、癌投与群では、vcam-1及びE-セレクチンmRNA量が、野生型マウスの夜給餌群より昼給餌群で増加する時刻が存在した。 野生型マウスの夜給餌群に比べて昼給餌群及びclock変異マウスの癌転移数が増加したこと、野生型マウスの昼給餌群の時計遺伝子発現の位相が変化したことから、休息時刻に摂食することによって末梢組織の概日リズムが乱れ、一部の接着因子の発現が亢進して、癌の転移が起こりやすくなることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
clock変異マウスは交配して得ているが、予想より供給匹数が少なかったこと、実験条件設定に時間がかかったことなどから、若干研究が遅れている。 平成24年度中に癌の転移に関わる接着因子の発現に及ぼす食餌摂取のタイミングの影響について検討したが、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)やそのインヒビター(TIMPs)、あるいは 細胞周期や増殖に関わる因子の遺伝子発現変化の検討まで至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.マウスの食餌摂取時刻が癌の転移に関わるMMP、細胞増殖などに関わる因子の発現に及ぼす影響 引き続き、食餌摂取時刻が癌の転移に関わる因子に及ぼす影響について調べるため、昼あるいは夜給餌群マウスの肺から単離回収したRNAを用いて、MMP、TIMP、c-Myc, p53などのmRNA発現を比較検討する。 2.概日リズムを介した癌転移抑制効果を示す食餌中の成分の探索 概日リズムに影響を与え、癌転移を増悪あるいは抑制する食餌中の成分を探索するため、高炭水化物飼料、高脂肪飼料、高タンパク質飼料、高食塩飼料などの特殊飼料を調製し、 (1)普通食あるいは上記の特殊飼料を明期に給餌し、給餌開始から1週毎に肺を採取して時計遺伝子の発現を調べ、時計遺伝子の発現パターンへの影響を普通食と比較検討する。 (2) 普通食を明期に8週間摂食させた後、普通食あるいは上記の特殊飼料を暗期に与え、どの飼料によってより早く普通食の夜給餌群の時計遺伝子の発現パターンに回復するかを検討する。 (3) (1)と(2)で何れの特殊飼料でも普通食群との違いが見られなかった場合、普通食を1日摂取量の7割にした制限食、普通食を自由摂食、高カロリー食(高脂肪食)を自由摂食という給餌条件で(1)、(2)と同様の実験を行い、検討する。 (1)、(2)、(3)の結果から食餌摂取のタイミングを昼夜逆転させたときの概日リズムを乱しやすい食餌成分、あるいは概日リズムを早期に改善する飼料成分や摂取カロリー量を調べる。合わせて(1)~(3)の条件で概日リズムに影響を与える特殊飼料を給餌し、マウスメラノーマ癌細胞の肺転移に及ぼす影響も検討し、概日リズムを乱すことにより癌転移を亢進あるいは概日リズムを改善することによって癌転移を防ぐ食餌成分を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究助成申請時には、制限給餌器を使用予定経費として申請したが、別予算で購入したため、研究費が残った。現在、研究試料(動物臓器、RNA試料など)や試薬を保存するための冷凍庫が不足しているため、本研究費で購入する予定である。また、研究を遂行するため、プライマー、標識試薬、酵素やプラスチック製品などの消耗品と、動物実験用の動物と特殊飼料を研究費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)