2013 Fiscal Year Research-status Report
食品の香りが脳のストレス応答に及ぼす影響の客観的評価
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24650506
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
増尾 好則 東邦大学, 理学部, 教授 (60301553)
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Keywords | ストレス / 脳 / 中脳 / MAPK / MKP-1 / BDNF |
Research Abstract |
本研究は、コーヒー豆の香りが脳のストレス応答に及ぼす効果を解析してストレス抑制メカニズムを明らかにすると共に、ヒト血中ストレスマーカー候補群の変化に対する香りの効果を明らかにすることを目的とする。平成25年度は、コーヒー豆の香り曝露の影響について、糖質コルチコイド誘発受容体(GIR)、コレシストキニン(CCK)受容体、cytoskeletal-associated protein(Arc)を中心に機能解析を行う予定であったが、動物舎の老朽化に伴い、コーヒー豆の香り暴露実験が充分行えなかった。ラットを無作為に4群:対照群(通常環境)、ストレス群(水浸ストレス)、コーヒー群、ストレス+コーヒー群に分けた。各環境下で24時間飼育した後に中脳を摘出し、RT-PCR法により遺伝子発現解析を行った。脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子発現は、各群間で有意な差が認められなかった。しかし、ストレス群は対照群より減少傾向を示し、ストレス+コーヒー群はストレス群より増加傾向を示した。ストレスは中脳におけるBDNF遺伝子発現には影響を与えにくい可能性が示唆された。MAPK phosphatase-1 (MKP-1)遺伝子発現は、ストレス群とストレス+コーヒー群において対象群より有意に増加した。しかし、ストレス+コーヒー群は、コーヒー群と比較しても有意に増加していた。ストレスによって増加する中脳域のMKP-1遺伝子発現は、コーヒー豆の香りに顕著な影響を受けないものと考えられる。 平成25年度は、さらに、コーヒー豆の香りがヒトのストレスレベルに及ぼす影響を調べる予定であったが、ヒト末梢血におけるストレスマーカーの探索に終始した。上記研究結果に基づき、ストレスマーカー候補に関する内容を国内および国際学会で発表した。現在、国際誌への投稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「コーヒー豆の香りが脳のストレス応答に及ぼす効果を詳細に解析し、ストレス抑制メカニズムを明らかにすると共に、ヒト血中ストレスマーカー候補群の変化に対する香りの効果を明らかにすること」のうち、平成25年度の実施計画についてはほぼ達成したと考える。すなわち、ストレス負荷実験から行動科学的解析に至る動物実験および全脳摘出後に嗅球、大脳皮質、線条体、海馬、扁桃体、中脳等の諸核を採取し、生化学的・分子生物学的解析を実施した。本年度は、海馬と大脳皮質(前頭葉皮質)を中心とした解析に続き、情動に重要な中脳について解析した。当初、新規ストレスマーカー候補蛋白質のうち抗体が存在しないものについて計画していたMALDI image 解析は、リール大学との共同研究を開始する段階に留まった。上述のごとく、当初の計画より若干ターゲットを絞ったことにより、新知見を得ることが出来た。成果の一部については、近々、投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には、コーヒー豆の香り曝露の影響について、25年度までに解析を終えた因子以外を中心に機能解析を行う。また、コーヒー豆の香りがヒトのストレスレベルに及ぼす影響を調べる。1. 動物実験:24 年度と同様に行う。2. ストレスマーカー候補群の解析:24 年度と同様に行うと共に、ヒト末梢血におけるストレスマーカーの探索を行う。3. 臨床実験:ヒトの脳波を測定し、コーヒー豆の香り存在下でストレス曝露の影響を明らかにすると共に、採血する。4. 研究のとりまとめ:上記研究結果に基づき、コーヒーの香りがストレスに及ぼす効果を脳内分子レベルで明らかにし、国際誌、国内誌、学会等を通じて発表する。また、ストレスマーカー群をヒトの精神的健康に資するための研究へつなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物舎の老朽化に伴い、コーヒー豆の香り暴露実験が予定通り行えなかったため。 動物実験のための環境を整えた上でコーヒー豆の香り曝露の影響について解析する。ストレスマーカー候補群についても、これまで以上の種類について解析する。臨床実験を本格的に行う。上記研究結果に基づき、コーヒーの香りがストレスに及ぼす効果を脳内分子レベルで明らかにし、国際誌、国内誌、学会等を通じて発表する。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] From stress to depression2013
Author(s)
Suzuki K, Rakwal R, Shibato J, Masuo Y
Organizer
11th World Congress of Biological Psychiatry (WFSBP Congress 2013)
Place of Presentation
国立京都国際会館(京都市)
Year and Date
20130623-20130627
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