2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650508
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
山本 覚 福山大学, 生命工学部, 教授 (10191404)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脂肪酸代謝 / ω酸化 / ボディーウェイトコントロール |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、動物における脂肪酸からの糖新生の可能性を証明することであり、以下の①~⑥の各項目について実験を行う予定である。①脂肪酸ω酸化経路に関与する酵素系の確立。②ω酸化、及びβ酸化経路を経て、脂肪酸からコハク酸等の短鎖ジカルボン酸生成の証明。③脂肪酸の代謝全体に占めるω酸化経路経由の代謝量の解明。④培養細胞系を用いて、脂肪酸由来のジカルボン酸からの糖新生を証明する。⑤絶食や糖尿病時におけるω酸化系酵素の動態の追跡。⑥酵母S. cerevisiaeのグリオキシル酸経路、脂肪酸β酸化経路及び脂肪酸ω水酸化経路に関わる酵素の遺伝子破壊株を用いた、これら代謝経路の糖新生への関与の証明。 平成24年度は、上述①を中心に研究を展開した。脂肪酸ω酸化は3段階の反応(脂肪酸ω水酸化反応、ω-ヒドロキシ脂肪酸脱水素反応、およびω-オキソ脂肪酸脱水素反応)から構成されている。脂肪酸ω水酸化酵素については、既に著者らがウサギを材料に用いて詳細な性質が明らかにしているが、それに続く酵素に関する報告は少ない。本研究において、ウサギ肝より脂肪酸ω酸化経路への関与が疑われるAlcohol dehydrogenase Class 1、Class2 isozyme 1、Class2 isozyme 2、およびClass3の4種類、およびω-オキソ脂肪酸脱水素酵素1種類のcDNAをクローニングに成功した。これらcDNAを大腸菌内で発現させ、精製後、その触媒活性を検討した。その結果、Alcohol dehydrogenase Class 1がω-ヒドロキシ脂肪酸脱水素反応に大きな役割を果たしていることを明らかにした。また、この反応により生成するω-オキソ脂肪酸はω-オキソ脂肪酸脱水素酵素により直ちに対応するジカルボン酸にまで酸化されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に計画した実験は順調に進めることができ、「研究実績の概要」に記述したように一定の成果を上げることができた。すなわち、ウサギ肝より4種類のω-ヒドロキシ脂肪酸脱水素酵素アイソザイム(Alcohol dehydrogenase Class 1、Class2 isozyme 1、Class2 isozyme 2、およびClass3の4種類)、およびω-オキソ脂肪酸脱水素酵素(1種類)のcDNAクローニングを行い、各cDNAの塩基配列を決定した。これらcDNAの塩基配列を基にオリゴDNAプライマーを設計して、次年度に計画しているこれら酵素群の絶食時の動態の検討に必要なリアルタイムPCR法によるの条件検討を先行して行うことができた。また、これらcDNAの(ω-ヒドロキシ脂肪酸脱水素酵素アイソザイム、およびω-オキソ脂肪酸脱水素酵素)の大腸菌内発現に成功した。発現タンパク質を抗原として抗体作成を行い、次年度に計画しているウエスタン解析によるこれら酵素群の絶食時の動態の検討の準備を整えることができた。ω-ヒドロキシ脂肪酸脱水素酵素アイソザイム4種類のうち3種類及びω-オキソ脂肪酸脱水素酵素cDNAの大腸菌内発現タンパク質については触媒活性を示したことから、基質特性を詳細に検討することができた。次年度には培養細胞を用いた脂肪酸ω酸化経路の役割の解明を予定しているが、初代肝培養細胞の調製法と培養条件についても予備実験を完了させることができた。 以上、平成24年度の研究計画に加えて、次年度に計画している研究の準備を整えることができたことから、平成24年度の研究の進捗状況は順調であると自己評価している。これらの研究成果を2編の論文として発表する予定で現在執筆、準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、次のように研究を展開する計画である。 〔動物における、絶食や糖尿病時のω酸化系酵素の動態〕 著者は脂肪酸からの糖新生経路は重篤な飢餓状態など、動物がグルコースを利用できない生理状態下において生命維持に働く緊急的代謝経路であると推定している。そこで、絶食処理、ストレプトゾトシン処理により糖尿病を発症させたラットを用い、脂肪酸ω水酸化酵素活性、ω-ヒドロキシ脂肪酸脱水素酵素活性およびω-オキソ脂肪酸脱水素酵素活性の変化を追跡する。また、平成24年度に確立したリアルタイムPCR法により、これら酵素の種々の生理状態下、病態下における脂肪酸ω酸化系酵素をコードするRNAの動態を検討する。また、平成24年度に調製した抗体を用いてウエスタン解析により発現タンパク質についても解析することで、グルコースを利用できない生理状態下におけるω酸化系酵素の動態を明らかにする。 〔酵母S. cerevisiaeの遺伝子破壊株を用いた糖新生経路の確立〕 酵母は真核生物であるが、単細胞生物であるため神経やホルモン等の制御による影響を考慮することなく代謝の動態を検討することが可能である。また、酵母は培養操作や栄養条件のコントロールが容易であるなど優れた実験材料である。さらに、酵母は脂肪酸をβ酸化系経路で分解し、生成するアセチルCoAから糖新生を行うことが出来、脂肪酸ω酸化系も有しており本研究の材料として必要十分な要件を満たしている。そこで、Yeast Knockout Collection(YKC)よりグリオキシル酸経路、脂肪酸β酸化経路および脂肪酸ω酸化経路の各酵素遺伝子の破壊株を用いて、最小栄養培地、高脂質培地、無グルコース培地等の種々の栄養培地で培養することにより、糖新生におけるそれぞれの脂質代謝経路の役割を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、食餌制限したウサギ等実験動物及び遺伝的糖尿病ラットにおける脂肪酸ω水酸化酵素、ω-ヒドロキシ脂肪酸脱水素酵素、及びω-オキソ脂肪酸脱水素酵素の動態をリアルタイムPCR法により精査するため、さらに培養細胞を用いてω酸化経路を経る脂肪酸代謝量の測定のために、実験動物、一般試薬、HPLC分析用カラム、ガラス器具などの消耗品購入費用として74万円の使用を予定している。また、研究試料の著しい増加を予定しているため、生体材料保管のためにメディカルフレーザー(-20℃~-30℃)(パナソニック社製(KM-MV49H1J))購入に37万円を充てる予定である。さらに、実験補助人件費として5万円、旅費(研究成果の学会発表)として5万円、論文投稿費(英文校閲委託料を含む)として10万円を使用する計画である。
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