2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650508
|
Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
山本 覚 福山大学, 生命工学部, 教授 (10191404)
|
Keywords | 脂肪酸 / ω酸化 / β酸化 / α酸化 / ボディウェイト / アルコールデヒドロゲナーゼ |
Research Abstract |
肥満は生活習慣病の間接的原因として問題となっている。肥満症患者には食事療法や運動療法による減量指導等が行われるが、減カロリー食による減量中の貯蔵中性脂肪がどのように代謝されるのか?という問題については明確ではない。著者は飢餓時に脂肪酸ω酸化経路が活性化されることを見出しており、脂肪酸ω酸化経路がボディウェイト・コントロール中の脂質代謝に重要な役割を果たしていると推定している。本研究では、脂肪酸ω酸化経路に関与する酵素系を解明し、絶食等の状態下におけるそれらの酵素群の動態変化を明らかにすることによって、脂肪酸代謝の新しい経路として脂肪酸ω酸化の生理的意義を確立することを目的としている。 平成24年、25年度は次のことを明らかにすることができた。ラット肝初代培養細胞系を用いた実験においてメディウム中に添加した14C標識脂肪酸の内、少なくとも6.5%がω酸化経路で代謝されていることを明らかにした。また、ラットの尿中には脂肪酸ω酸化経路により代謝されて生成する相当量の脂肪酸代謝物(ジカルボン酸)が排泄されていることを見出すことができた。これらの結果より、脂肪酸代謝においては脂肪酸β酸化経路だけでなく脂肪酸ω酸化経路が重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、脂肪酸ω酸化経路に関与するωヒドロキシ脂肪酸の脱水素反応を触媒する酵素として、アルコールデヒドロゲナーゼアイソザイムの中では、アルコールデヒドロゲナーゼ Class I が重要な役割を果たしていることを明らかにした。 さらに、本研究において、顕著な量の奇数炭素数の脂肪酸ジカルボン酸誘導体が尿中に排泄されていることを発見した。これは脂肪酸のα酸化経路による代謝物と推定される。動物では脂肪酸α酸化経路についてはほとんど研究されていない。この発見は今後の研究展開の端緒となると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで脂肪酸ω酸化経路の生理的意義、およびin vivoにおける脂肪酸ω酸化による脂肪酸代謝の代謝量についてはほとんど明らかにされていなかったが、本研究において、概ね明らかとなりつつある。また、脂肪酸ω酸化経路に関与する酵素群として、脂肪酸ω水酸化酵素、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、そしてアルコールデヒドロゲナーゼを特定することができた。さらに、動物ではこれまで重要視されていなかった脂肪酸α酸化経路が顕著に働いていることを明らかにすることができるなど、予定する研究をほぼ実施することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、減カロリー食による減量中の貯蔵中性脂肪がどのように代謝されるのかを明らかにすることを目的としており、脂肪酸ω酸化経路が飢餓等の生理状態において脂肪酸代謝に重要な役割を果たしていると仮説を立てている。平成24年度、および25年度の研究において、脂肪酸ω酸化経路に関与する酵素群を解明することができた。また、in vivoにおいて脂肪酸ω酸化経路が働いていることを確認することができた。さらに脂肪酸α酸化により生成する奇数炭素数のジカルボン酸も尿中に排泄されていることを見出した。 平成26年度はこれらの知見に基づいて、絶食時に尿中に排泄される脂肪酸のジカルボン酸誘導体の量的解析する。また、脂肪酸代謝において脂肪酸α酸化経路も関与していることが明らかとなった。そこで、尿中に排泄された脂肪酸のジカルボン酸誘導体のGC-MSによる定量法を確立し、絶食時のα酸化、β酸化、及びω酸化の各経路の役割について解明する予定である。本研究開始時に予定していた脂肪酸からの糖新生を証明する実験は延期し、代わりにラットの肝及び腎におけるα酸化経路の解明に新たに取り組みたい。α酸化については、これまで細菌について過酸化水素を必要とする極めて特殊な反応系であることが報告されている。動物ではこれまでほとんど研究されておらず、早急に取り組む価値のある課題であると判断するためである。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画では、高価な病態実験動物(糖尿病ラット)を用いて、脂肪酸ω酸化経路に係る酵素群の解明を予定していたが、この研究については来年度に実施を延期した。糖尿病ラットは高額であり、その使用数が少なく、実験材料費が少なくなった。 また、研究成果の論文発表のための投稿費用と専門業者による校閲を予定していたが、諸事情により論文作成が遅れているため、次年度への繰越となった。 次年度は病態動物と用いた実験を中心として行うため、相応の経費を費やす予定である。また、一部の実験について、その実験技術をもつ人材を短期間の雇用を計画している。さらに、これまでの研究成果について、学会発表及び学術論文として発表するための旅費、校閲費及び投稿費として使用する。
|