2012 Fiscal Year Research-status Report
小学校理科気象分野の「実感を伴う理解」を図る体験型教員研修プログラムの構築
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24650530
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
吉本 直弘 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (10294183)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小学校理科 / 気象 / 実感を伴った理解 / 体験活動 / 教員研修 |
Research Abstract |
本年度は以下の2項目について研究を行った。(1)小学校理科の気象分野において指導が難しい学習内容及び児童の理解度が低い学習内容の調査,(2)授業に導入できる,授業に役立つ観察・実験方法の開発である。(1)では,大阪府東大阪市立の小学校に勤務する教員を対象として第4学年「水のすがた」についてアンケート調査を行った。この調査では,水の凍結実験に対する児童の理解度が低いことが明らかになった。その原因として,水が0℃ではなく氷点下で凍結する実験結果となり,水の状態変化と温度との関連づけが難しくなったと考えられた。水の過冷却は高校理科の化学IIで学習する内容であり,理系以外の学部出身の教員では知らない場合が多い。したがって,水の凍結実験において過冷却状態が観察されると,教員も児童もその結果に困惑することになる。そこで,(2)の課題として,水が過冷却状態になりにくい,すなわち水が0℃で凍結しやすい実験方法の工夫を行った。水が凍結して氷になるためには,氷の形成を手助けする核が必要である。その核として釣り糸を水の中に入れて実験を行ったところ,水のみでは10回の実験すべてで過冷却状態になったのに対し,10回中4回の実験で水が0℃で凍結した。 (2)ではさらに,雨の強さと雨滴の大きさの関連づけを図る模型教材の開発を行い,日本地学教育学会での研究発表と大阪教育大学研究紀要への論文発表を行った。第5学年「雲と天気の変化」については,大阪教育大学附属天王寺小学校で授業観察を行った。児童の学習の様子から,雲の様子と天気の関連づけに課題があることが明らかになった。そこで,インターバル撮影した雲の写真とホワイトボートを活用し,雲の様子と天気との関連づけを行うグループワークによる言語活動を取り入れた授業方法の提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の「(1)教員が指導に苦手意識を持つ気象の学習内容及び児童の理解度が低い学習内容を明らかにする。(2)授業に導入できる,授業に役立つ観察・実験方法を開発する。」について想定通り達成できた。(1)については,教員へのアンケート調査及び授業の観察を通して,課題に取り組むことができた。(2)については,児童が問題解決の力を身につけられるよう,実験結果の整理と考察を行いやすい実験方法の工夫(第4学年「水のすがた」)と,体験活動と言語活動のつながりを意識した授業方法の提案(第5学年「雲と天気の変化」:導入【雲の発生実験】→グループワーク【雲の様子と天気の予想】→雲の観察→グループワーク【雲の様子と天気との関連づけ】→気象情報の活用→グループワーク【天気の変化の規則性】→雲の観察と気象情報の活用→グループワーク【天気の予想】→まとめ)を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,以下の3点を挙げる。(1)学習内容の背景となる気象学の基礎知識の整理,(2)観察・実験の準備から実施,結果の整理に至るまでの授業の進行におけるポイントと課題の解明,(3)教員研修の実施である。(1)では,小学校理科の気象分野の単元において,指導上必要となる気象学の基礎知識は,「太陽と地面の様子」と「雲と天気の様子」では主に大気の放射,「水のすがた」では大気の熱力学と降水過程,「雲と天気の変化」では降水過程と大気の運動,メソスケールの気象である。これらの気象学の基礎知識について,理科系以外の大学・大学院出身の教員向けにわかりやすい解説を作成する。(2)では, 観察・実験の準備物は何か,授業の進行の中でどのように観察・実験を行えばいいか,そのとき児童に配布する資料は何か,児童が記入するワークシートはどのように作成すればよいか,授業のまとめはどのようにすればよいか,観察・実験の片付けなど,授業の進行におけるポイントと課題を明らかにし,ガイド資料を作成する。(3)では,観察・実験の体験活動を取り入れた教員研修(体験して楽しく学ぶ小学校理科―5年「雲と天気の変化」―)を大阪教育大学柏原キャンパスにおいて平成25年8月27日に実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額の6,175円については,この金額の中で使用するよりは次年度の研究費と合わせて使用する方がより適切であると考えた。具体的には観察・実験に使用する消耗品の購入に充てる。
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