2012 Fiscal Year Research-status Report
定量的要素を取り入れた新しい環境教育プログラムの開発
Project/Area Number |
24650542
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Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
笠井 利浩 福井工業大学, 工学部, 准教授 (60279396)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境教育 / ライフサイクル思考 / 初等教育 / 緑のカーテン / 雨水利用 |
Research Abstract |
平成24年度(初年度)は、これまで実施してきたライフサイクル思考(以下、LCT)に基づく環境教育用教材として利用してきた雨水活用装置に「壁面緑化システム(緑のカーテン)」を追加導入した。壁面緑化システムを6月に設置し、ゴーヤ等の苗植えや水やり等を設置先小学校の児童と共に行い、横幅18m、高さ10mの緑のカーテンを完成させた。この緑のカーテンは、育成期間中に申請者が実施する小学校児童向けの環境教育授業の他、実施校内で行われている理科や生活科等の授業においても幅広く利用され、学校教育における教材としての可能性の高さが評価されている。本課題のテーマであるLCTに基づく環境教育については、実施前の準備として4月に教員向けの「現職教育」を行い、全体のコンセンサスを得た後に開始した。児童に対する環境教育授業については、4年生、5年生(2回)向けに計3回実施した。4年生向けには、今回導入したシステムの効果に関心を持たせることを目的とし、教室内での日常体験を通じてシステムの説明やその効果について体感的に理解できるような授業を行った。一方、5年生向けには、雨水活用装置や緑のカーテンで得られる環境負荷削減効果と装置設置時の環境負荷量を定量的に捉え、総合的に評価する事の重要性を説明するための授業を行った。これらの授業から、初等教育におけるLCTに基づいた環境教育実施の可能性が示された。 本研究課題では、LCTに基づく環境教育プログラムを開発を行うだけではなく、最終的には手引書を作成して実際の教育現場で取り入れ可能な形にして紹介することも目的としている。従って、今年度の研究成果は、日本LCA学会や日本環境教育学会等の研究発表会の他、国内最大級の環境展示会等で展示紹介を行い、普及活動も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、環境教育用教材として導入した緑のカーテン等のシステムに対するインベントリ分析結果を基に、ライフサイクル思考(以下、LCT)に基づく環境教育プログラムを構築することである。今年度は、本プログラムの主な対象学年の内、導入(4年)とLCTの概念を紹介(5年)するための授業を実施・評価することができた。プログラム全体としては、これらの授業に加えてLCTを身の回りの環境行動に当てはめて考えるための授業(6年)を予定しており、初年度の実施計画としては順調に進展している。 また、本研究課題の特徴の一つである実体験に基づいた“長時間体験型”プログラムを達成するための教材についても、県内最大級の緑のカーテンを児童と共に完成させてコンテストで大賞を受賞している。この育成過程の中では、緑のカーテンの効果的な育成方法の他、児童と共に実施した“苗植え”や“記念撮影”等のイベントを通じて、緑のカーテンの教材としての可能性の高さを現場の教員と共に確認することができた。この点については、緑のカーテンが本研究課題で取り上げるプログラム内容を超えた可能性を持つ環境教育用教材であることに繋がるものであり、実施計画以上の成果が得られたと判断している。 本研究課題では、得られた研究成果からLCTに基づく環境教育の手引書を作成・配布することを目標の一つにしている。これについては、中間的な報告として日本LCA学会環境教育研究会から出された報告書にもLCTに基づく環境教育として掲載され、現在最終的な手引書作成への準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の環境教育授業は、4年生向けの本環境教育プログラムへの導入授業と5年生向けのライフサイクル思考(以下、LCT)を取り入れた授業を行った。来年度は、本環境教育プログラムの最終段階である、6年生向けのLCTに基づく環境教育授業を実施する。この授業の中では、既に児童の身近で行われているエコ活動を題材に取り上げた授業を行い、学校で用意された教材による環境教育から日常活動における環境行動に繋がる教育を目指す。 主に4、5年生向けの環境教育授業で使用する緑のカーテンと雨水活用装置については、今年度までは個別に環境教育用教材として活用してきた。来年度は、これらの装置を連携稼働させ、環境教育用教材としてより有効な装置に改良する予定である。これに伴い、5年生向けの環境教育で個別に取り上げていた緑のカーテンと雨水活用装置を統合した形で授業内容の見直しを行う。 また来年度には、本研究課題の成果をベースにした「初等教育におけるLCTに基づいた環境教育マニュアル」と成果報告書を作成する。マニュアルについては関連学会での発表や環境展示会等を通じてPRを行い、必要に応じて配布する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度の研究費には、物品費500千円、旅費100千円、人件費・謝金100千円、その他100千円を計上する。物品費には、これまで個別に環境教育用教材として利用してきた緑のカーテンと雨水活用装置を連携稼働させるために必要となる貯水タンクや配管類等の資材、緑のカーテンの維持管理に毎年必要となる追肥や水耕肥料等が含まれる。旅費は、学会発表(東京、滋賀)と研究打合(東京)に必要な経費である。人件費・謝金については、講義・実習補助と装置改造補助にかかる経費である。また、その他については、学会参加費、学会誌投稿料、報告書作成費、環境教育マニュアル作成費、LCAデータベース利用料にかかる経費である。
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