2012 Fiscal Year Research-status Report
智恵の創出過程の共有に着目した論拠を探る議論支援ツールの開発
Project/Area Number |
24650558
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
舟生 日出男 創価大学, 教育学部, 准教授 (20344830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横藤田 誠 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (20212300)
岡村 誠 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (30177084)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 公共政策 / 政策の制定過程 / 議論の争点の可視化 / 議論支援 / 公民 / 協調的問題解決 / 相互理解の促進 / ルールメイキング |
Research Abstract |
本研究の目的は,主に社会科学系の分野にみられる,立場の異なる人との対話や協調を通して世情や利害を考慮し「知恵を出し合った」結果としての公共政策の成立過程を紐解く作業を通じて,智恵が創出された過程の論拠を理解し,現在の社会問題に対して,反対立場の意見にも配慮しながら自分の意見を論理的に述べ,現状の打開策を提言できるような議論の支援である. 今年度の研究実施計画は,A)トレードオフの分り易い公共政策の選定と論点の構造化,B)公共政策の制定過程を探求する議論支援ツールの開発,であった.具体的には,A)予備調査として,政策の成立過程を探求する議論支援ツールを適用するための基礎データを収集し,公共政策の選定と論点の構造化を行い,B)これまでに開発した複数のシステムを統合する技術の調査に加え,学習者のコメントの交換・集約機能を実現し,オーサリングツールとタブレット端末へのデータ通信を実装するシステムを開発することであった. 今年度の研究成果は,上述のA)トレードオフの分かりやすい公共政策の選定と論点の構造化について,憲法第25条,憲法第36条を選定し,制定過程における論点の構造化を行った.制定過程における論点を5W1Hと時系列,発言者のバックグラウンド別に整理することで,議論の争点を可視化することができた.また,B)について,研究代表者の開発した協調学習支援システムKneading Boardを利用して,議論の争点を可視化する支援を行うことができる点を技術的に確認できた.しかし,大規模講義で活用するために必要なネットワーク環境を整備することはできなかった.これは,A)の成果によって,中学校での授業実践が実現したため,中学校教育現場での活用を進めることが本研究の目的達成と成果の普及に繋がると考え,こちらを優先させたからである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的達成のために,研究期間内に明らかにすることは次の3点である.1)法学・経済学を対象に,対立する立場を智恵で解決した議論のプロセスをモデル化する.2)上記知見に基づいて,プロセスを可視化する支援システムを開発する.3)支援システムを用いた授業実践とその評価を行い,運用のためのカリキュラムを作成する. 今年度においては,2)までを行う予定であった.また,1)について,法学・経済学分野から1つずつテーマを選定する予定であったが,法学分野で2つのテーマを選定することができた.経済学の要素については,憲法25条の制定過程で公共福祉の財源について議論されているため,ここに含めることとした.よって,1)については達成することができたと言える.2)については,先行研究において開発したシステムであるKneading Board上で議論プロセスの可視化を行うことができるよう,背景テーマやノードなどの整理を行うとともに,新規機能について検討した.研究当初は,大規模講義での運用を予定していたためネットワーク環境の整備も予定していた.しかし,運用先を中学校に変更するとともに予備的にコンピュータやネットワークを利用しない学習活動をデザインしたため,ネットワーク環境の整備は行っていない.よって,2.は50%程度の達成率である. 今年度の研究計画では,2)までを達成する予定であったが,1)の成果について,広島県内の中学校の社会科教諭及び学校長から教育効果に関して高い評価を受けたため,中学3年生を対象として本研究の成果を授業実践することができた.よって,3)の一部を本年度に実施することができたと言える. 以上の進捗状況から,現在までの達成度は概ね順調であると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究推進方策は,1)24年度の授業実践を評価し,学習活動や指導法,教材の改善を行うこと,2)支援システムを開発すること,3)支援システムを活用した授業実践を複数回実施して,研究の成果を普及すること,の3点に重点的に取り組む. 次年度の研究計画は,支援システムを用いた授業実践とその評価を行い,運用のためのカリキュラムを作成することである.平成24年度に行った授業実践において記録した,授業録画,学習者へのアンケート,半構造化インタビューなどを分析し,授業実践および運用の改善点をまとめる.改善した授業案に基づいて,授業実践を行い,本研究の目的である「公共政策の成立過程を紐解く作業を通じて,智恵が創出された過程の論拠を理解し,現在の社会問題に対して,対立する立場の意見にも配慮しながら自分の意見を論理的に述べ,現状の打開策を提言できるようになる」ことを支援することができたか,評価を実施する.授業実践を増やし,成果を普及するために,複数学年での実施や,複数校での実施を視野に入れ,運用のためのカリキュラム作りを行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は,主に中学校での授業実践を行うために使用する予定である. 具体的には,教材作製費,研究者及び研究協力者らの出張費,DVカメラやICレコーダーなど授業記録器材の購入,授業記録の分析や教材作成の補助者に支払うための謝金,研究成果の発表旅費である.
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