2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650564
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 杉弥 日本工業大学, 工学部, 准教授 (00286022)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 理科教育 / 科学敎育 / 物理敎育 / 演示実験 / 遠隔実験 |
Research Abstract |
本研究の目的は、授業の受講者それぞれがパーソナルコンピュータを用いてWebブラウザ経由でその場にいるように利用できる、遠隔操作可能な物理実験装置群(テレイグジステンス実験装置)を開発すること,および,それらを用いた効果的な教授法を開発することである。このために、当該年度においては装置のプロトタイプの開発を主眼とし、自動化と遠隔操作の手順の研究と授業での試用を目標とした。当該年度に実際に製作した装置は,「レーザー光を用いた光学演示装置」と「モンキーハンティング実験装置」の二種類である。 光学演示装置は散乱媒質によりレーザー光を可視化するものだが,安全のためと散乱媒質の均一化のために透明な箱型容器を筐体とした。散乱媒質として従来用いられていたような線香やタバコなどの煙でなく,超音波霧化ユニットを組み込んで用いた。これにより匂いや火の危険を回避でき,また,より定常的に実験が行えるようになった。また,撹拌ファンを組み込んで回転数の制御や設置位置の最適化を行い,散乱媒質が筐体内に適度な濃度で均一に分布するようにした。この結果,室内照明のもとでも安定に観察が行えるポータブルな装置ができた。 モンキーハンティング装置は,従来のものと異なり,よりゆるやかな動きで観察を容易にするために,角度の小さい斜面を使って行う装置を開発した。斜面角度を5~10°程度に抑えて斜面方向の重力成分を1/10~1/5程度に抑えることにより,目視により十分な観察を行うことができた。 利用に関しては,光学演示装置内で単純な反射から反射回折による虹の現出までのさまざまな演示実験を実際に小中学生および大学の授業などで試行して良好な反応を得た。自動化およびネットワーク経由の制御については,マイコンによるオンオフおよびモータ制御の実験を行った。さらに,ネットワークカメラ経由でも良好に観察が行えることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の研究計画において,装置の製作については3種を計画していた。このうちa)光学演示装置についてはほぼ最適化まで終わり,c)モンキーハンティング実験装置について製作を進めているが,b)液体窒素実験装置については製作していない。これは当初想定したよりも液体窒素の取り扱いが困難であると判断したためで,代替としてb')真空放電の演示装置の検討を進めている。また,c)モンキーハンティング実験装置については,斜面を利用するために,現象は良好に観測できるが,基本的な物理設定に異なる部分が生じるため(斜面との摩擦,球を使った場合の回転エネルギーの存在など),その部分がどの程度影響するかの検討をする必要があり,場合によっては改良が必要である。 自動制御とネットワーク接続については,要素的な検討はしているが装置に組み込むに至っていない。これは上記の装置製作を優先したためである。 教授法の開発については,実際に小学生,中学生,大学生に対して製作した装置を現場で用いた演示を取り入れる授業等を行うことができた。しかし,ネットワーク越しの操作についての検証は,ネットワークカメラを用いて観察を行い眼前での実験観察との比較を行い反応の比較までを行ったが,上記の遅れにより実際に遠隔操作実験をして比較するに至らなかった。 成果の発表については,研究会に光学実験装置の実機を持込み発表を行い批評を仰いだ。また,応用物理学会において発表を行い,ほぼ予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画では前半に実験装置の増産を終える予定であったが,プロトタイプシステムの製作が遅れているため,現在までの達成度に鑑みてその完成を急ぐ。増産についてはa)光学演示装置とc)モンキーハンティング実験装置については当初想定より単純化できる見込みであるので後半での複数台稼働に向けて製作の目処はある。b)液体窒素実験装置については内容をb')放電実験演示装置に変えて製作を進める。これについては基本の装置自体は単純な放電管であり研究代表者の経験分野であるため比較的容易に行えると考えている。 授業への適用については,上記製作の達成により平成25年度前半に平成24年度後半の予定であった遠隔操作の実験および平成25年度前半の予定であった複数台の稼働試験を続けて行う予定である。また,授業対象については,所属大学の授業の他に,平成24年度において主に近隣と関東の複数の小中高等学校に出前授業などでの関係を持てたので,検討できる対象校が複数ある。さらに本研究で製作した装置とは別テーマであるが,平成25年9月にサイエンスパートナーシッププログラム(SPP)を秋田県で行う計画があるので,その場での(遠隔地からの)試用も検討する。 平成25年度後半においては上記のシナリオで遅れを取り戻すと共に,予定通り複数台の装置を平常に用いた実施効果の調査を行い,また,教授法の確率および教材製作を実施してとりまとめと発表を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用計画のうち制御用PCを予定通り1台を購入し,ネットワークカメラを7台購入した。装置製作については自動化・増産などの予定が遅れており手持ちの材料などを使用したためほぼ予定通りの合計金額となった。少額であるためこれは平成25年度の材料費の一部として使用する予定である。 なお制作する装置について変更があるため,これに要する真空容器などの材料費支出割合が増える予定である。また,ネットワークカメラについては平成24年度予定の10台に対して7台の購入になった。平成25年度でもネットワークカメラおよび制御用PCを追加購入の予定であったが,これらは装置製作の進捗をにらみ,平成24年度購入品で可能な範囲をまかない,不足分があれば購入したい。
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