2013 Fiscal Year Research-status Report
法的アブダクションに基づくIRAC学習支援システムに関する研究
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24650568
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
櫻井 成一朗 明治学院大学, 法学部, 教授 (20202088)
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Keywords | アブダクション / 法学教育 / 議論 / 論理的思考 |
Research Abstract |
今年度はより多くのアブダクション事例を題材とできるように、判決文の理解におけるアブダクションに焦点を絞って研究を展開した。裁判官の行う推論においては様々な局面でアブダクションが行われていると考えられるが、判決文中では、新しい規範や既存の法規の解釈を仮説命題として与え、この仮説命題を適用して結論を導くことが少なくない。仮説命題は背景知識からの演繹的帰結ではなく、仮説命題を前提として結論が導かれることから、アブダクションとみなせる。仮説命題を事実に適用する際には、判決文では「これを本件についてみると」という形式で適用されることが多い。したがって、「これを本件について」という語句をキーワードとすれば、仮説命題を立案した判決文は容易に検索でき、実際に、最高裁判例の3.5%にこのキーワードが含まれている。今年度は、これらの判例のいくつかについて裁判官の法的推論の分析を行った。一方、IRACによるレポート作成や分析の基礎スキルとしては、文章の論理構造を理解して読み解く能力、文章を論理的に記述する能力が必然的に求められる。それゆえ、今年度は論理的思考態度の教育の実践を試みた。まず、判決文を与え、トゥールミン図式により判決文の「事実」と「結論」および「事実から結論を導く法規」を見つけさせる事で、論理構造の抽出を試みさせた。判決文の論理構造を読み解けるようになった段階で、論理構造に基づいた議論のトレーニングを行った。相手方の理論構成を探り、短所を攻撃し、自らの短所を防御できるように指導する事で、論理的思考を通じた議論ができるようになった。文章作成については個別指導を十分に行えず、十分な効果が得られなかった。この点については、IRAC形式のレポート作成のための支援システムが必要となるが、そのための基礎技術として、ブラウザ上で動作するProlog処理系の設計を行い、支援システム設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
法学部3年生であっても演繹的に思考するという訓練が不十分であったので、アブダクションによる学習が達成できなかった。まず演繹的思考を実践できるようになる事がアブダクションの前提であるので、演繹的思考を身につけるために、判決文の論理構造を読み解く作業を重点的に行わなければならなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
判決文の読解を通じて、論理的思考や議論のスキルを高められることが確認できたので、今年度はIRACによるレポート作成を実践することで教育方法を確立する。そのために、自然言語処理技術の活用により、学生の文書作成の支援を行う事で個別指導の負担を軽減する方法に付いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗に遅れが生じたために、論文投稿等に予定していた経費を割り当てることができなかった。 論文投稿及び英文論文投稿のために用いる。
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Research Products
(1 results)