2012 Fiscal Year Research-status Report
福島県における歴史資料保全と地域総合資料学の構築に関する研究
Project/Area Number |
24650584
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
阿部 浩一 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (70599498)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 文化財保全 / 歴史資料 / 環境史 / 地域総合資料学 |
Research Abstract |
本研究は、2011年3月11日の東日本大震災によって甚大なる被害を受けた福島県において、地域住民の「心のよりどころ」、アイデンティティーというべき地域文化の保全と継承をはかるべく、その重要な基盤となる歴史資料の現況追跡調査と保全、および地域住民の歴史認識のさらなる深化をめざす。その際、地域の中で総合的に歴史・考古・自然資料の保全をはかることが重要であり、それらを総合的に「地域総合資料学」と位置づけることで、地域社会への文化面での貢献を果たそうとするものである。 平成24年度には、当初計画にもとづき、「地域総合資料学」構築に向けての基礎研究として、研究代表者および徳竹剛(研究分担者)が、伊達郡国見町において実施した歴史資料現況調査の成果を報告書にまとめた。この調査は次年度以降も継続し、地元自治体・郷土史研究会・町内会との連携にもとづく歴史資料の所在調査と記録・整理、研究成果の公表につとめる。研究代表者はこのような歴史資料の情報集約ととともに、情報発信として論文発表と学会報告、市民向け講演を実施した。また、災害からの歴史資料保全と関わって、自然環境と人間のかかわりについての歴史的考察をはかる論文も執筆した。また、黒沢高秀(研究協力者)が被災地域における植物資料の整理と植生・生育地等に関する研究成果を公表した。 以上の成果は、本研究の課題である「地域総合資料学」の基礎となる研究の成果であり、他の被災県に比べても復旧・復興が立ち遅れている福島県にあって、文化面からの復旧・復興に寄与する意義をもつ研究である。特に、福島県では歴史資料や文化遺産に関する情報の集約と発信の立ち遅れが顕著であり、本研究がその新たな牽引役となる重要性を有している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画では、①「地域総合資料学」構築のための基礎研究、②歴史資料悉皆調査、③資料保全についての講演会、④環境史研究の推進、をめざすものとした。それにもとづく研究の成果については、①では福島県での歴史資料保全活動に関する論文を3件、学会報告を2件、研究協力者が論文1件、学会報告1件を得た。②では、国見町における歴史資料現況調査報告書1件を得た。南相馬市小高地区では、自治体史編纂室の協力を得て所在確認のためのデータベースを作成したが、現状ではなお住民の帰還が進んでおらず、調査実施が困難であり、次年度以降の課題として継続する。③では市民向け講演を3件、④では環境史研究に関する論文を1件、実施した。上記の件数からも、本研究の課題に精力的に取りくんだという一定の評価ができるものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、福島県における「地域総合資料学」の基礎となる研究の成果のさらなる蓄積をはかるため、引き続き、地元自治体・郷土史研究会・町内会との連携にもとづく歴史資料の所在調査と記録・整理、研究成果の公表につとめる。このうち、南相馬市小高地区については地元住民の動向を注視しながら調査の実施時期を策定したい。伊達郡国見町については、旧宿場町である藤田地区を中心に、対象地区を順次拡大する。この国見町での成果を足がかりに、他の自治体へも調査対象を広げていくことをめざす。 「地域総合資料学」は文理融合型の新たなモデルでもあるため、関連分野である考古学、自然史などについては、引き続き研究協力者の助力を求めたい。 最終年度となる平成26年度には、調査に基づく成果と研究成果の集約につとめ、「地域総合資料学」の構築に向けてのシンポジウムを開催し、研究成果を報告書にまとめて公表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の実施状況から鑑みて、調査のための補助・整理のための人件費・謝金が必要となることから、実施状況に応じて、当初予定していた関連図書費の一部を適宜充当することにする。
|
Research Products
(9 results)