2013 Fiscal Year Research-status Report
福島県における歴史資料保全と地域総合資料学の構築に関する研究
Project/Area Number |
24650584
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
阿部 浩一 福島大学, 行政政策学類, 教授 (70599498)
|
Keywords | 文化財保全 / 歴史資料 / 環境史 / 地域総合資料学 |
Research Abstract |
本研究は、2011年3月11日の東日本大震災によって甚大なる被害を受けた福島県において、「ふくしま歴史資料保存ネットワーク」の一員として歴史資料の保全活動に尽力してきた経緯と実績に基づき、県内の歴史資料の現況追跡調査を段階的に進めていくことで、地域住民のアイデンティティーの基盤ともなる歴史資料の保全、および地域住民の歴史認識のさらなる深化をめざす「地域歴史資料学」の基盤づくりに努め、地域社会への文化面での貢献を果たす。また、その保全対象を古文書・書籍などの狭義の歴史資料だけでなく、考古遺物、民俗資料、さらには化石・植物標本などの自然史資料にも拡大していくことで、文理融合型の新たな「地域総合資料学」の構築をめざすものである。 平成25年度には、旧警戒区域と震災・原発事故災害の被災地を中心に、福島県内の歴史・文化遺産が置かれている現状と課題をまとめ、特に旧警戒区域の文化財等の保全と展示活用などのための専門施設の必要性を提起した『ふくしま再生と歴史・文化遺産』(山川出版社)を上梓した。本書では研究代表者が編著者となり、菊地芳朗(研究協力者)・本間宏(連携研究者)も成果を公表している。平成24年度から徳竹剛(研究協力者)とともに継続して行っている国見町での歴史資料現況調査についても報告書にまとめた。また、黒沢高秀(研究協力者)が被災地域における維管束植物についての分布調査等をまとめた。 以上の成果は、本研究の課題である「地域総合資料学」の基礎となる研究の成果である。近隣の被災県に比しても復旧・復興は今なお立ち遅れている福島県では、歴史・文化遺産の保全と継承にまで手がおよんでいない。その点でも、本研究の成果にもとづく情報の集約と発信はきわめて重要な意義を有している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画では、前年度に引き続き、①「地域総合資料学」構築のための基礎研究、②歴史資料悉皆調査、③資料保全についての講演会、④環境史研究の推進、をめざすものとした。このうち①では歴史・文化遺産の保護と継承に関する編著書1冊、論文1点、植物に関する研究協力者の論文2本、②では国見町での歴史資料保全活動に関する報告書1冊を得た。③では学会報告ではないが、市民向け講演会1本を実施した。上記の内容および件数からも、本研究課題に精力的に取りくんだという一定の評価ができるものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、福島県における「地域総合資料学」の研究の総括にあたるため、研究協力者・連携研究者の協力を得て、シンポジウムの開催ならびに報告書の作成により成果を公表することとする。そのための基礎研究として、継続課題である国見町での歴史資料現況調査を推進する。旧警戒区域を中心とする地域での歴史資料現況調査については、受け入れ可能となった市町村から推進していくことを検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計画では研究関連の図書購入費、資材購入費、遠方の関連学会への参加旅費等を想定して使用計画を立てたが、研究の進展にともなって県内での調査および学内での資料整理が中心となったため、上記の使用額が大幅に縮減した。その代わりに調査・資料整理に必要な謝金の額が増加した。 平成26年度は研究計画の最終年度にあたるため、当初計画より報告書作成費を増額するほか、前年度に引き続き調査・資料整理にともなう謝金も必要になるため、次年度使用額を有効に活用し、支出項目の見直しをはかって、最大限の効果が得られるようにする。
|
Research Products
(5 results)