2012 Fiscal Year Research-status Report
年代が明確な日本最古の人骨に伴う哺乳類遺体群集とその古環境
Project/Area Number |
24650587
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
河村 善也 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00135394)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 哺乳類遺体 / 分類学 / 第四紀後期 / 環境 / 人骨 |
Research Abstract |
年代が明確な日本最古の人骨が出土した沖縄県石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡の後期更新世~完新世の堆積物から、2010年8月~11月の発掘調査で得られた膨大な量の哺乳類遺体のうち、半数以上については系統分類学的な研究を終えることができた。その結果の概要を、沖縄県立埋蔵文化財センター発行の報告書に本研究の研究協力者と共著で掲載した。この遺跡の出土遺体の研究とともに、石垣島の他の第四紀哺乳類化石産地や第四紀層の調査も行った。このような石垣島の後期更新世~完新世の遺体群集の特徴やその古環境的な背景を明らかにするためには、周辺地域のデータとの比較が必要である。そこで、沖縄本島や台湾で連携研究者の協力を得て、動植物化石や第四紀層の調査を実施した。また、宮古島や日本本土でも比較可能な遺体群集やそれを含む堆積物、さらに関連する化石産地や第四紀層の調査を行った。そのような研究活動で得られた成果は、数多くの概報や速報として研究協力者と共同で国内の学会や国際シンポジウムで発表した。また、それらの内容を論文化するための準備作業も行った。さらに、琉球列島を含む日本全体の後期更新世の哺乳動物相のまとめや、上記の石垣島の遺跡と同時期の宮古島の重要な哺乳類化石産地の動物相についての論文を本年度に国際誌に掲載したが、それらは本研究を推進するための重要な基礎データとなるものである。 以上のような研究活動で、白保竿根田原洞穴遺跡の動物群のうち非飛行性のものは島嶼型の特徴を示し、同時期の琉球列島の他の島や台湾の動物群と大きく異なっていることが明らかになった。さらに、それらのことをもとにして、後期更新世~完新世の琉球列島の古地理・古環境や人類の渡来の問題について考察することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、本年度に計画していた石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡出土の大量の哺乳類遺体の抽出や整理・分類の作業は、ほぼ予定どおりに終えることができた。一方、それらの系統分類学的研究は、遺体数が予想以上に多かったことから、すべて終えることができなかったので、次年度も継続して研究を行うことにした。さらに、当初予想していなかった事態としては、この遺跡の補足調査が2013年1月~2月に沖縄県立埋蔵文化財センターによって急遽実施されたことである。この調査によって新たに現地で哺乳類遺体や堆積物が採取され、現在その処理作業を行っている。当初計画していた石垣島以外の国内での調査と、中国や台湾での標本調査や野外調査もほぼ予定どおり実施できた。研究成果の発表も国内学会や国際シンポジウムでほぼ順調に実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、平成24年度に系統分類学的研究が完了しなかった哺乳類遺体について研究を行う。さらに平成24年度末に急遽実施された補足調査で得られた堆積物から哺乳類遺体を抽出し、整理・分類を行った上で、それらの遺体の系統分類学的研究を行う。またこの遺跡では平成25年度、もしくは平成26年度に沖縄県立埋蔵文化財センターによって再度補足調査が行われる可能性があるので、行われた場合は調査に参加し、現地での遺体や堆積物の採取、それらの処理や分析を行う。一方、この遺跡の哺乳類遺体群集の特徴やその時間的変化を広い視野でとらえて、その意義をより明確にするために、沖縄県内ばかりでなく日本国内各地の第四紀哺乳類化石産地や遺跡の調査に出かけて、この遺跡のデータと比較可能なデータの収集に努める。また、国内や中国、台湾の研究機関・大学・博物館で保管されている化石・現生標本との比較も行う。連携研究者は平成24年度に沖縄県内や台湾で収集した古環境に関するデータや試料の分析を進める。以上のような研究で得られた成果は平成24年度と同様に、今後も逐次学会で発表するとともに論文化を進める。 なお、本研究の連携研究者は大阪市立大学の三田村宗樹教授と千葉大学の百原新准教授の2名であり、海外共同研究者は中国科学院古脊椎動物古人類研究所の金昌柱教授と張穎奇副教授、それに台湾の国立自然科学博物館の張釣翔副研究員と東海大学の林良恭教授の4名である。研究協力者は、三重県立博物館主事の中川良平と大阪市立大学大学院生の河村愛の2名である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
石垣島をはじめ沖縄県内への旅費、国内各地の研究機関・大学・博物館での標本調査のための旅費、国内の第四紀哺乳類化石産地や遺跡などでの調査のための旅費といった国内旅費のほか、中国での研究活動のための旅費や、台湾での野外調査や大学・博物館での標本調査のための旅費といった海外旅費を使用する。また消耗品費として、哺乳類遺体の抽出作業や整理・分類に必要な消耗品費(サンプル袋、薬品類、標本ケース、計測器具など)、データ整理に必要なコンピュータ関係の物品や文房具類などの費用も使用する。さらに、その他の経費として、現地調査での移動手段としてのレンタカーの借用料や燃料費など、堆積物や標本の輸送費、業者委託の分析費なども使用する。 なお、平成24年度に予定していた調査の一部を次年度に行うことにしたため、平成24年度の使用予定額に残額が生じた。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] A new OIS 2 and OIS 3 terrestrial mammal assemblage on the Miyako Island (Ryukyus), Japan2012
Author(s)
Nakagawa, R., Kawamura, Y., Nunami, S., Yoneda, M., Namiki, M., Shibata, Y.
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Journal Title
British Archaeological Reports
Volume: 2352
Pages: 55-64
Peer Reviewed
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