2013 Fiscal Year Research-status Report
年代が明確な日本最古の人骨に伴う哺乳類遺体群集とその古環境
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24650587
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
河村 善也 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00135394)
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Keywords | 哺乳類遺体 / 分類学 / 第四紀後期 / 環境 / 人骨 |
Research Abstract |
2013年3月発行の「白保竿根田原洞穴遺跡―新石垣空港の建設に伴う緊急発掘調査報告書―」(沖縄県立埋蔵文化財センター)に、2010年の発掘調査でこの遺跡から出土した哺乳類遺体の研究成果をまとめたが、そこにまとめたもの以外にも調査研究を要する遺体がまだかなり残っていたので、本年度にはそれについての研究を行った。また2013年1月~2月にも沖縄県立埋蔵文化財センターによってこの遺跡の緊急の補足調査が行われ、その際に採取された堆積物から得られた哺乳類遺体の研究も本年度に行った。さらに、2013年10月~12月にも沖縄県立埋蔵文化財センターによる本遺跡の追加調査が行われたが、その際にも石垣島で現地調査を行った。このような研究で、石垣島での後期更新世~完新世の動物相の変遷や古環境の復元に必要なデータが徐々に蓄積している。そのようなデータをさらに精密化し、確固たるものにするため、北海道大学やその他の多くの国内の研究機関と、中華民国の国立自然科学博物館で化石標本や現生標本との比較研究を行った。また、それらのデータをよりダイナミックにとらえ、その意義をより明確にするためには、石垣島を含む琉球列島に隣接する日本本土や台湾で、同時期の動物相やそれから推定される古環境を研究し、琉球列島のものと比較研究する必要がある。そこで、日本本土や台湾で同時期の動物群の研究と、対比に必要な年代研究を行った。日本本土での研究の一部はすでに論文として公表し、琉球列島のものと比較するデータが蓄積しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
石垣島での研究成果のかなりの部分は、予察的な報告として本研究の初年度末に「白保竿根田原洞穴遺跡―新石垣島空港の建設に伴う緊急発掘調査報告書―」の中に掲載している。その内容は後期更新世~完新世の遺体群集の系統分類学的研究の成果にとどまらず、琉球列島の古環境、古地理、人類の渡来など多くの問題について重要な指摘を行っている。そのため、その内容をより精緻なものにして、いくつかの論文として国際誌に投稿する準備を進めている。上記の報告書作成以後に行われた発掘調査で得られた遺体についても、現在順調に研究を進めており、その結果も今後遂次発表できる予定である。琉球列島での研究成果と比較するための日本本土や台湾での研究も順調で、すでに成果の一部は公表しており、今後に予定している国際誌の論文にも、日本本土-琉球列島-台湾といった広い視野の内容を盛り込みたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には「白保竿根田原洞穴遺跡―新石垣島空港の建設に伴う緊急発掘調査報告書―」で取扱うことのできなかった遺体の調査研究を行うとともに、平成25年度内にこの遺跡で実施された2回の発掘調査で得られた遺体の調査研究を行い、上記報告書の内容をさらに確実で充実したものにするように努め、成果を沖縄県立埋蔵文化財センターの報告書、または論文として公表する。また、この遺跡の哺乳類遺体群集の特徴やその時間的変化、それから推定される古環境について、より広い視野でとらえて、その意義を明確にするために、これまでの年度と同様に、日本国内の後期更新世~完新世の遺跡・化石産地での調査を行い、石垣島のデータと比較可能なデータ収集に努める。さらに国内や海外の研究機関・大学・博物館で、そこに所蔵されている化石・現生標本との比較研究を行う。以上のような研究で得られた成果は学会等で遂次発表するとともに、論文として出版するように努め、26年度内には本研究を総括するように努めたい。なお、平成26年度においても、本研究の連携研究者は大阪市立大学の三田村宗樹教授と千葉大学の百原新准教授、海外共同研究者は中国科学院古脊椎動物古人類研究所の金昌柱教授と張穎奇副教授、中華民国の国立自然科学博物館の張鈞翔副研究員と東海大学の林良恭教授、研究協力者は三重県立博物館主事の中川良平と大阪市立大学大学院生の河村愛とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査などの際に協力してもらった人に支払う予定の謝金が不要となったため、次年度使用額が生じた。 沖縄県内をはじめとする国内各地の研究機関・大学・博物館での調査研究のための旅費、国内各地の第四紀哺乳類化石産地や遺跡などでの調査のための旅費、国内学会での研究発表のための旅費などの国内旅費を使用する。また中国や台湾での標本比較や野外調査のための海外旅費も使用する。また、消耗品として、哺乳類遺体の抽出や整理、分類に必要な物品(サンプル袋、標本ケース、計測器具など)やデータ整理に必要なコンピューター関係の消耗品や文房具類も購入する。次年度は最終年度なので、データ整理や研究補助の謝金も若干支出する。その他の経費として、国内での現地調査に必要なレンタカーの借用料や燃油代など、哺乳類遺体を含む堆積物や化石・現生標本の輸送費、論文の別刷り代なども使用する予定である。
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