2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650590
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小泉 圭吾 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10362667)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | センサネットワーク / 環境モニタリング / 保存科学 / 無線 / アドホック / マルチホップ / 温度 / 湿度 |
Research Abstract |
大地震や気象変動による文化財の短期・長期的な劣化の進行過程を捉えるためには周辺の微気象環境データをリアルタイムかつ継続的に収集する必要がある。石造遺跡においては、乾湿繰返し、凍結融解による風化、劣化予測が緊急の課題である。屋内美術品に着目すると、繰り返される入館者の体温、発汗による温湿度の変動、或いは収蔵庫内の温湿度変動など、劣化、損傷の危険性とは常に隣合わせの状況にある。現状ではデータロガー,毛髪計による環境観測が行われているが、前者はデータを蓄積するだけ、後者は物が大きすぎるため、実現象をタイムリーかつ精度よく捉えられないのが現状である。本申請研究ではこれらを解決するために、ユビキタスネットワーク技術による、文化財保存のための環境観測用のスマートダストを開発する。当該年度の研究計画とその成果は次のとおりである。 計画1):センサノード間の通信距離が見通しで1.5km程度のアドホック、マルチホップ型のセンサノードの開発を行う。本年度は、IEEE802.15.4に準拠した2.4GHz帯域の通信モジュールにてこの要求精度を満たすことができるかどうかの検討を行い、プロトタイプを設計、開発し、屋外での種々の通信実験を行う。 成果1):当初計画に沿って、2.4Ghz帯域の無線モジュールにより、アドホック、マルチホップ型の無線センサネットワークシステムを開発した。通信距離は見通しで1.5kmとしているが、当年度に実施した通信試験ではノード間で300mまでの通信を確認した。 計画2):博物館内の収蔵庫、展示空間にある防火扉などの金属製遮蔽物に対して、安定した無線通信環境(回収率85%以上)を構築できるセンサノードのアルゴリズムを開発する。 成果2):開発したノードを用いて屋外の閉鎖空間にて通信実験を行い、回収率が90%程度で安定していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたアドホック・マルチホップ型のセンサノードの開発が予定通り遂行できた。また、一般に無線の通信環境が悪いとされる、屋外の閉鎖空間において、当初予定していたデータ回収率を上回る成果を確認した。一方、無線通信距離については、仕様上の見通し1.5kmに対し、十分な通信実験を行うことが出来なかった。これらの点を加味して評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、トルコのカッパドキアにおいて、本システムの実証実験を行う予定にしていたが、母体となるユネスコの国際プロジェクトが国際問題の影響により、延期または中止となる可能性が出てきた。引き続き、別枠での研究継続を模索中であるが、その可能性について、現時点では未定である。そこで、東京文化財研究所の協力を受け、同じく凍結融解が課題の1つとなっている、臼杵磨崖仏を対象に、本システムを用いた環境観測システムの試験導入を検討することとした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当年に計画していたカッパドキアでの調査旅費および観測システムの製作費が、国際問題の影響で計上することができなかったため、次年度の研究費として繰り越すこととなった。次年度の使途としては、カッパドキアにかわる臼杵の磨崖仏群を対象とした観測システムの製作費および調査費として計上する他、博物館内での観測システムの製作費として計上する予定である。
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