2012 Fiscal Year Research-status Report
古墳壁画表面における含水量の非接触測定システムの開発
Project/Area Number |
24650592
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
Principal Investigator |
犬塚 将英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 研究員 (00392548)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 壁面含水量 / 非接触 / 自動計測 / 絶対湿度 / 赤外線 |
Research Abstract |
本研究は、高湿度環境下にある古墳壁画の壁面含水量とその時間的変化を測定するための非接触による手法を開発し、国内外の古墳の壁画で実践的に運用し、そのシステムの有効性を評価することを目的とする。壁面の含水量及びその時間変動を非接触な手法により調べるために、2種類の測定原理に基づいた自動計測システムの具体的な方法を考案し、開発を進めてきた。 ひとつ目の方法は調査対象となる壁面の前に複数個の温湿度測定器を設置して、温度と相対湿度から計算される絶対水分量の勾配を調べることにより、壁面における水分の時間変動を調べる方法である。ここでは、超小型温湿度データロガーを利用することにより、簡便さと小型さを追求し、現場でも活用することが容易な測定システムの構築を目指した。この測定システムの評価のために、東京文化財研究所にて基礎実験を行ってから、装飾古墳を模したレプリカの石材を用いた試験的な測定と中国陝西省の古墳壁画における測定を開始した。さらに、高湿度環境下において温湿度データロガーよりも堅牢であるセンサーを組み込んだ測定システムの開発も行っている。 ふたつ目の方法は、小型の赤外線照射装置と赤外線センサーを組み合わせて、赤外線の反射率を観測することにより、壁面における水分量の時間変動を調べる測定方法である。赤外線センサーから出力されるアナログ信号をデータロガーなどの信号読み取り専用の装置に接続して自動計測を行う。また、壁面に対する長時間の赤外線照射は劣化を招く危険性があるので、赤外線照射装置は制御装置と接続することにより、照射時間のプログラム制御を行う。本年度は、このような測定システムを構成する各装置の選定、測定システムの構築、測定システムの動作の評価をするための基礎実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高湿度環境下にある古墳壁画の壁面含水量とその時間的変化を非接触な手法により調べるために、2種類の測定原理に基づいた自動計測システムの具体的な方法の考案及び開発を進めてきた。 ひとつ目の方法は調査対象となる壁面の前に複数個の温湿度測定器を設置して、壁面における水分の時間変動を調べる方法である。本年度、超小型温湿度データロガーを利用することにより、簡便さと小型さを追求し、現場でも活用することが容易な測定システムの構築した。基礎実験を行った後に、この測定システムを用いて装飾古墳を模したレプリカの石材を用いた試験的な測定と中国陝西省の古墳壁画における測定を開始した。これらのサイトでは現在も測定を継続中である。今回用いた温湿度データロガーは高湿度下において精度が落ちる欠点があるために、より堅牢である温湿度センサーを組み込んだ測定システムの自作も進めており、基本的な動作確認を行った。 ふたつ目の方法は、赤外線の反射率を観測することにより、壁面における水分量の時間変動を調べる測定方法である。本年度は、このような測定システムを構成する各装置の選定を行い、測定システムの原型を構築した。そして、赤外線照射装置と赤外線センサーの特性を評価する基礎実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象となる壁面の前に複数個の温湿度測定器を設置して壁面における水分の時間変動を調べる方法については、平成24年度に装飾古墳を模したレプリカの石材を用いた試験的な測定と中国陝西省の古墳壁画における測定を開始したが、これらの測定データを解析することにより、測定システムの評価を行う。また、高湿度環境下において堅牢である温湿度センサーを組み込んだ測定システムの自作も進めているが、今後はこの新しい測定システムの実用化、基礎実験、古墳における適用を予定している。 赤外線の反射率から壁面における水分量の時間変動を調べる測定方法については、赤外線センサーから出力される信号の処理方法、照射時間のプログラム制御などの改良を行う。この測定手法に関しても実用化、基礎実験を行ってから、古墳における適用を予定している。 以上の研究成果を平成25年7月に日本文化財科学会にて発表し、平成25年度末には『保存科学』への投稿を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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