2013 Fiscal Year Research-status Report
文化財美術品搬送における振動および温湿度環境の調査
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24650600
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
西藤 清秀 奈良県立橿原考古学研究所, その他部局等, その他 (80250372)
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Keywords | 文化財移送 / 振動 / 温室度 / データロガ / インカ帝国展 |
Research Abstract |
今年度の研究は、展示品移動時に生じる振動や梱包箱内の温湿度を計測し、展示品搬送に関わる振動・温湿度の数的データを求め、文化財・美術品搬送時に実際生じる種々の局面での振動・温湿度についてのデータを収集することに務めた。この振動に就いては人的移動、車両、昇降機材による移動、航空機への積み下ろし、航空機の発着環境、道路路面環境等のさまざまな局面において異なった振動が予想され、その影響も異なることが考えられる。また、梱包容器内の温湿度については、季節、搬送車輛環境、航空機内環境が大きな影響を及ぼすと考えられる。 2014年度3月国立科学博物館を皮切りに2ヶ年にわたって全国9箇所で開催されたTBS主催「インカ帝国展」の展示品の各展示館への移送に際して展示品梱包箱の5箱に振動計兼温室度計を設置し、移送時の振動記録と梱包箱の内部の温室度の記録を取った。今年度は、4月7日の富山県民会館美術館での「インカ帝国展」閉幕後のデータロガの設置以後、京都文化博物館での回収・設置、福岡市博物館での回収・設置、鹿児島県歴史料センター黎明館での回収・設置、沖縄県立博物館・美術館での回収・設置とペルー国への返却時での回収をおこなった。展示品の上記展覧会会場への移送については鹿児島―沖縄間に船舶による海上輸送、ペルー返却のために沖縄―東京への移送には航空機が使用された。そして東京―リマ間はアムステルダム経由の航空機による移送であった。他の搬送手段は記述した以外は、すべて車両による陸送であった。この展覧会での展示品移送の全記録をとることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は博物館内の展示品にかかわる振動対策ではなく、文化財移送時に生じる振動の影響に注目し、新たな研究を展開しようとするものである。全国各地の博物館では展覧会のために頻繁に文化財・美術品の貸し借りがおこなわれているが、その文化財・美術品の搬送時に生じる振動・温湿度については科学的な数値は少なく、経験的な要素から、搬送時の文化財・美術品に注意が払われている。その中で指定文化財に対しては、免振付きケースで搬送が図られる場合があるが、数的根拠は乏しい。それは温湿度に対しても同様である。そのような中、この研究は2014年度3月国立科学博物館を皮切りに2ヶ年にわたって全国9箇所で開催されたTBS主催「インカ帝国展」の展示品の各展示館への移送に際して展示品梱包箱の5箱に振動計兼温室度計のデータロガを設置し、最終的にはペルー国への返却時での回収をおこなった。上記展覧会会場への移送については陸送が主であったが、船舶による海上輸送、航空機による空輸と各種移送手段の振動記録と梱包箱の内部の温室度の記録を取ることができた。その意味で研究は順調に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の計測した記録の詳細な分析は、まだ十分にはおこなっていない。しかし、2年間にわたる陸送、海上輸送、空輸の異なった移送手段の記録の分析にどのような相違が認められるのか、さらに異なった移送手段への積み降ろし時にどのような振動が発生しているのかを26年度に分析し、最終的な報告をおこなう。この研究に際して全面的な協力をしてくれたペルー文化省からもこの研究の報告が期待されている。今年度の最終的な分析を踏まえ、今後さらに詳細なデータ収集や異なった分析法が必要な場合、さらに研究を継続して実施していきたいと考えている。
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