2014 Fiscal Year Annual Research Report
陸域の災害や人類活動が半遠洋的環境の堆積作用に与えたインパクトの解明
Project/Area Number |
24650603
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
白井 正明 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (50359668)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 深海底 / 半遠洋性堆積物 / 河川 / ダム堆積物 / 堆積物供給 / 東海沖 / 熊野沖 / 新潟沖 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本列島周辺の東海沖,熊野沖,新潟沖の3海域の陸棚~半遠洋的環境で採取されたコア試料と流入河川河口域・ダム湖内の試料のPb-210濃度を測定し,(i) タービダイト直上に普遍的にPb-210高濃度層が存在するか,(ii) 河口~陸棚域でPb-210濃度が有意に高いかを解析し,Pb-210濃度からタービダイト泥を識別できるか検証した.また,Pb-210濃度変化を基に過去50~100年程度の堆積速度を復元し,陸域の人類活動との関連性について検討した. Pb-210濃度による,陸域から流れ込んだタービダイト泥と半遠洋性泥質堆積物の判別はできなかったが,各海域の試料において20世紀半ばに堆積速度がそれ以前の1/2~1/4程度に低下していることを見出した.年代見積もりに信頼がおけるコア試料でのMAR低下時期とダム建設時期の一致,新潟沖におけるMAR低下コアとMARが一定のコアの河口との位置関係,またダム堆積物は一般にその体積の半分以上が泥質粒子からなり,深海堆積物と粒度が共通すること,以上から,ダム建設による土砂供給の阻害が,深海域の堆積作用にも影響を与えている可能性が高いことが示唆された.東海沖・熊野沖でMAR低下を記録したコアの地形的特徴から,泥質粒子はタービダイトを形成するような混濁流ではなく,低密度の濁水が海面近くに広がった後,濁水中の粒子が下降するようなプロセスを経て堆積したと考えた方が合理的である.一方斜面や陸棚上ではMARの低下は検出できないことが多く,堆積物の再移動・再堆積によりMARの変化が顕著でないと推定された. 河川における巨大ダムの建設が,沿岸域への土砂供給を阻害していることは良く知られているが,実際にはその影響は深海の半遠洋的環境にまで及んでいる可能性が高いことが示された.この新たな知見が環境学や海洋科学などの分野に与える影響は大きいと予想される.
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