2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24650605
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
倉茂 好匡 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (20241383)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸尾 雅啓 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80275156)
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Keywords | 堆積物 / 近過去 / 水質復元 / 堆積年代 |
Research Abstract |
平成24年度に採取した北川河口域堆積物の柱状試料中に挟まれている葉脈等集積層が年層である可能性が高いことを報告した。そこで、平成24年秋に堆積した落ち葉の上に土砂が堆積する様子について目視調査を継続した。その結果、落ち葉の上に土砂が堆積するのは、4月末から5月初めの代掻き期であることが判明した。このことより、葉脈集積層が年層として利用できることが確定的になった。 また、平成24年度には、堆積物中の砂礫交り層が台風時に河口部より逆流して堆積したものであるとの仮説を立てた。そこで、平成25年秋の台風時に河口域に激しい風波がもたらされたときに、河口域での土砂流動を調べた。その結果、強い北西風で風波が立つと、河口域の砂礫が河口部上流側に掃流状態で運搬されていることが明らかになった。そこで、風速15 m/s以上の北西風が卓越した事象を気象庁のデータより検索した結果、堆積物中の2枚の砂礫交り層が堆積した事象を決定することができた。これらより、1990年以降の堆積物の堆積年を誤差3年で決定することができた。 次に、堆積物に沈着した化学物質濃度の分析を行った。そのうえで、彦根市が北川河口域で採水した河川水水質調査結果との比較を行った。彦根市が計測したリン酸態リンの濃度年平均値と堆積物に沈着しているリン酸態リンとの比較を行ったところ、堆積物沈着リン濃度の年変動と、河川水中リン濃度の年変動の間に良好な関係は見いだせなかった。このことは、ある水質の影響を受けて堆積した土砂に吸着していたリンが、堆積後に堆積物中で移動していることを強く示唆している。すなわち、本研究で最終目的としている「近過去の水質変化を堆積物に沈着している物質濃度から推定する」ためには、堆積物が堆積した以降に化学物質が堆積物中をどのように移動しているのか、そのメカニズムを解明しなくてはならないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
堆積物の堆積年代を、過去20年にわたり誤差3年で決定することができたことは大きな進捗である。一方、堆積物中の化学物質濃度の年変動が、河川水中の化学物質年変動と良好な相関関係がみられなかったことから、堆積物中の化学物質濃度からダイレクトに過去の水質変動を見出すことは無理であることを示している。すなわち、堆積後の堆積物中での化学物質移動のメカニズムを解明することが、当初目的完遂のために必要不可欠であることが判明した。 このように、新たな問題に直面したため、すんなりと研究目的を達成することは無理であることが判明したが、本研究が挑戦的なものである以上、新たな研究課題を得たことは研究進展状態がおおむね順調であることを物語っていると考えている。 また、すでにこれまでの研究成果は国内学会で発表する段階に来ており、平成26年度には国際会議でも発表する予定になっている。このことからも、研究進展状況を「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、本研究遂行のためには堆積後の堆積物中化学物質移動メカニズムの解明が必要不可欠であることが判明した。今年度は、この問題解決のための試行錯誤を行う予定である。おそらく、なんらかの実験系を組み立て、そこでの実験的追究が必要になると思われる。 今年度はこれまでの成果を公表すべく努力をする一方で、この実験系を含めた今後の研究進展方法について具体的検討を重ね、次回の科研費申請につなげたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
堆積物の化学分析が捗り、外注分析の必要がなくなった関係上、それに予定していた費用に残高が生じた。一方で、当初予定以上に興味深く不思議な現象を発見しているため、次年度に複数の国際会議で発表予定である。 代表者の倉茂好匡が水文学関連の国際会議で、また研究分担者の丸尾雅啓が分析化学関係の国際会議で研究成果公表の予定であるので、今年度からの繰越額を含め、次年度予算の相当部分をこの渡航費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)