2012 Fiscal Year Research-status Report
高感度人工レポーターを用いた乳癌幹細胞治療標的遺伝子の発現クローニング
Project/Area Number |
24650620
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 清次 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40333562)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 上皮間葉転換 (EMT) / 間葉上皮転換 (MET) / 乳癌 / レポーター / ライブラリースクリーニング |
Research Abstract |
epithelial-mesenchymal transition (上皮間葉転換、EMT)を誘導する因子が、転移浸潤のみならず、乳癌幹細胞の治療標的となり得るとの仮説をもち、EMT誘導に関わる遺伝子を発現クローニングによりポジティブセレクションで同定できる系を新規に開発し、ヒト乳腺細胞株レポーターを確立した。極めて悪性度の高い間葉系乳癌細胞株MDA-MB-231、BT549細胞cDNA libraryを、先のレポーター細胞に導入し、blasticidine耐性CD44hiCD24lo/- GFP強陽性のクローンからSnail遺伝子を同定している。 EMTレポーターに対してcDNA/shRNAライブラリーを行い、複数のEMT制御に関わるcDNA候補55個、shRNA候補40個を同定した。 EMTレポーターでの経験を元に、あらたに MET (mesenchymal-epithelial transition, 間葉上皮転換)レポーター系、さらにEMT/METを同時に感知できるdualレポーター系を確立した。 METレポーター細胞に対してレンチウイルスshRNA libraryを用いた発現クローニングを行い、細胞クローン60個を単離し、 候補shRNAを複数同定した。 shRNAを先のEMT/MET dualレポーター細胞に導入することでその効果を検証中である。 同時に乳癌臨床検体約200例からなるtumor microarrayを作成中であり、免疫組織学的解析にて、臨床病理学的因子(ER/PgR/HER2, intrinsic subtype分類、TNM stage分類、5年生存率)との関連をみる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒト乳腺EMTレポーター細胞において、間葉系乳癌細胞株MDA-MB-231・BT549 細胞cDNA libraryの発現スクリーニングを行った。vimentinプロモーター活性の上昇を示すblasticidine耐性細胞クローン57個を回収し、55個の候補遺伝子を同定した。 同様にshRNAライブラリーをスクリーニングした結果、blasticidine耐性細胞クローン30個を回収した。個々の細胞クローン由来のshRNAミニライブラリーによるEMT誘導能の解析より、15細胞クローンにてEMT誘導能があることが確認され、40個の候補shRNAを同定した。現在、個々のshRNAのEMT誘導能を検証中である。 これまで用いてきたplasmidベースのレポーターに加えて、lentivirusレポーター系を導入することで、細胞の上皮・間葉の状況をblasticidine耐性遺伝子の発現に反映するMETレポーター細胞を確立できた。此の方法をさらに発展させてEMT/MET dualレポーター系が確立され、GFP/RFPの蛍光蛋白の発現をFACSにて解析することで、容易にEMT/METの状況が定量的に把握できるようになった。 MDA-MB-231間葉乳癌細胞においてMETレポーター細胞を確立し、これにshRNAライブラリーをレンチウイルスにて導入し、blasticidine耐性細胞株56個を同定した。個々の細胞クローンのU6プロモーターshRNA部分をPCRにて回収、再度ミニライブラリーのMET誘導能を検証した結果、16個でE-cadherinプロモーター活性の上昇が確認された。これらのミニライブラリーより候補shRNA配列25個が同定された。 候補遺伝子の乳癌臨床検体での免疫組織学的解析を目的として、tumor microarray目的に症例の選定を終えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
EMTレポータースクリーニングにて得られた55個のcDNAと40個のshRNA候補のEMTの誘導能を、HMLE乳腺細胞株dual reporterにて検証する。METレポータースクリーニングにて得られた25個のshRNA候補についてMDA-MB-231細胞株dual reporterにて検証する。具体的にはこれまで乳癌研究で頻用されてきたCD44/CD24マーカーに加えて、GFP (E-cadherin promoter), RFP (vimentin promoter)の発現をFACSにて定量する。 個々のshRNA標的遺伝子について、ノックダウン効果をRNA発現解析にて検証すると同時に、複数の異なるshRNAによりEMT/MET効果が再現されるかを検証する。機能的な検索として、個々の候補遺伝子に対するcDNA/shRNAを発現させ、乳癌幹細胞特性であるanchorage-independent growth能力の指標としてsphere形成能・ソフトアガーコロニー形成能・in vivo造腫瘍能を検討する。 luminalとbasal正常乳腺細胞を不死化し、luminal/basal乳癌細胞の正常コントロールとして用いる。これらと乳癌細胞株を用いたウエスタンブロット・定量的RT-PCRによる発現解析を行い癌化やintrinsic subtypeとの関係を検討する。乳癌臨床検体における免疫組織染色による解析を行い、候補遺伝子の蛋白発現と臨床病理学的因子(ER/PgR/HER2, intrinsic subtype分類、TNM stage分類、5年生存率)との関係に検討を加える。 ノックダウンによりMETを誘導可能と判明した遺伝子については、乳癌幹細胞を分化リプログラムさせる可能性があるため、阻害化合物の同定を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養関連試薬に30万円、shRNA候補遺伝子の分子生物学的解析関連試薬に30万円、免疫組織学的解析関連試薬に20万円、国内外の学会出張旅費に20万円、論文投稿費用に10万円を使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)