2012 Fiscal Year Research-status Report
がん治療へ向けた腫瘍特異的T細胞の超迅速検出・取得法の開発
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24650630
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岸 裕幸 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (60186210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村口 篤 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (20174287)
小澤 龍彦 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10432105)
小林 栄治 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (70459733)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 抗原特異的T細胞 / がん特異的T細胞 / 細胞チップ |
Research Abstract |
我々は、これまでに細胞チップを用い約25万個のB細胞を単一細胞レベルで解析することにより、抗原特異的抗体分泌細胞を検出し、抗原特異的抗体を1週間以内に作製するシステムを確立してきた。本研究では、細胞チップ技術を発展させ、がん特異的T細胞を高効率に検出し、迅速に(細胞取得より2週間以内に)TCR遺伝子を取得するシステムを構築することを目的とし、研究を推進した。平成24年度はがん特異的T細胞を検出するために、(1)細胞チップ上で抗原特異的CD8+ T細胞および抗原特異的CD4+ T細胞を検出する方法を確立すること、(2)TCRの迅速な取得・機能解析法を確立することを目標に研究を進めた。 抗原特異的CD8+ T細胞に関しては、卵白アルブミン(OVA)由来ペプチドを認識するOT1 TCRトランスジェニックマウスおよびオス抗原(H-Y抗原)を認識するH-Y TCRトランスジェニックマウスのT細胞を用いて、細胞チップ上で抗原特異的T細胞を検出する条件を検討した。その結果、細胞チップ上に播種した、OT1 T細胞のサイトカイン分泌を、OT1ペプチド刺激特異的に、チップ上で観察することができた。また、H-Y T細胞のサイトカイン分泌を、H-Yペプチド刺激特異的に、チップ上で観察することができた。抗原特異的CD4+ T細胞に関しては、細胞膜ミセルとペプチドを使って、サイトカインの分泌を誘導できたが、ミセルの調製が不安定で、再現性を得ることが困難であった。単一T細胞からの高効率・迅速なTCR遺伝子の取得法に関しては、セルソータを用いて単一細胞ソートした細胞について、高効率に最短10日でTCR遺伝子を取得できる方法を確立することができた。 細胞チップ上での、単一細胞レベルにおける、抗原特異的T細胞の検出は、世界で最初である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)抗原特異的CD8+ T細胞に関しては、卵白アルブミン(OVA)由来ペプチドを認識するOT1 TCRトランスジェニックマウスおよびオス抗原(H-Y抗原)を認識するH-Y TCRトランスジェニックマウスのT細胞を用いて、OT1ペプチド刺激特異的に、あるいは、H-Yペプチド刺激特異的に、サイトカイン分泌をチップ上で観察することができ、当初の目標を達成することができた。(2)抗原特異的CD4+ T細胞に関しては、細胞膜ミセルとペプチドを使って、サイトカインの分泌を誘導できたが、ミセルの調製が不安定で、再現性を得ることが困難であった。達成度は60%である。(3)単一T細胞からの高効率・迅速なTCR遺伝子の取得法に関しては、セルソータを用いて単一細胞ソートした細胞について、高効率に最短10日でTCR遺伝子を取得できる方法を確立することができた。しかし、細胞チップから取得したT細胞からのTCR遺伝子の取得に関しては、効率が悪く、改善する必要がある。従って、達成度は80%と考える。 以上より、概ね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
【ヒトにおける抗原特異的CD8+ T細胞、CD4+ T細胞の細胞チップを用いた取得法の開発】(1)ヒトCD4+ T細胞は活性化されるとHLA-DR分子を発現することが知られている。これを利用しCD4+ T細胞自身のMHC class II 分子に抗原ペプチドを負荷し、刺激する方法を開発する。(2)そのほか、マウスT細胞における抗原特異的T細胞検出の方法に準じて、ヒト抗原特異的T細胞の検出法を開発する。モデルシステムとして、大半の日本人に不顕性感染していることが知られている、Epstein Barrウイルス、あるいは、サイトメガロウイルスのペプチドを抗原として用いる実験系を採用する。 【がん患者からのがん特異的T 細胞の取得(金沢大学との共同研究)】金沢大学では、肝臓がんを中心にペプチドワクチン療法を進めている。金沢大学にて、効果の見られた患者よりリンパ球を採取し、富山大学に送る。富山大学では、ペプチドワクチン特異的T細胞を細胞チップを用いて検出し、TCRの取得、および、TCRの抗原特異性、CTL活性の解析を行う。取得したTCRは、金沢大学にてがんの治療に応用すべく研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞チップを用いた解析が予定した以上に順調に進んだため、チップや試薬の購入が予定より少なくすみ、研究費の繰り越しが生じた。平成25年度は、患者やボランティア等、ヒトのサンプルを用いて、システムの検証を行うため、チップ、試薬の購入数を増やす。
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