2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650635
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
川島 洋人 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (60381331)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腫瘍診断学 / 呼気診断 / 揮発性有機化合物 / 安定同位体比 / 加熱濃縮 |
Research Abstract |
本研究は,呼気中に含まれる極微量の揮発性有機化合物(VOCs:Volatile Organic Compounds)における個別化合物安定同位体比の測定法を開発し,安定同位体比を利用した新たな肺がん診断手法の提案することを目的とした。平成24年度は実際の人の呼気中のVOCsの測定及び,大気中の安定同位体比の高精度測定法の開発を行った。 呼気中のVOCsの測定は,被験者18名(喫煙者9名,非喫煙者9名)の呼気を様々な条件下(喫煙の有無,煙草の種類,飲食前後等)で測定し,また同時にアンケートも実施して,VOCsの特徴を調べた。その結果,喫煙者の呼気において, 44成分中11成分で3ng~81ngと定量限界値以上,検出された。特にベンゼンとトリクロロエチレンは,喫煙者と非喫煙者の差がそれぞれ28ng,6ngと大きく,喫煙の有無を判別することができる可能性があった。 また,VOCs中水素安定同位体比の高精度分析法の結果は,VOCs36成分の水素安定同位体比を測定することが可能になった。VOCs混合標準ガスの繰り返し分析による分析精度(標準偏差)は,28成分で1.1‰~5.3‰以内となった。安定同位体比に関する既往の文献と比較しても,高精度の測定結果となり,本研究の方法は呼気の測定を行う上でも有利な方法であることがわかった。さらに呼気に近い大気中のベンゼン,トルエンの測定も行うことが可能になった。これらの結果は国際学術雑誌のAtmospheric Environment誌に報告することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,当初の計画の呼気採取に関する問題点の整理及び解決することができ,さらに一般大気におけるVOCs濃度及び安定同位体比分析も実施することが出来た。 呼気中のVOCsの濃度測定は所属機関保有の気体加熱濃縮器(TDS,ゲステル社製)とGC/MS(6890/5973,アジレントテクノロジー社製)を融合させることが出来,さらに喫煙者,非喫煙者の実際の呼気測定まで行うことができた。 またVOCs中の炭素,水素安定同位体比は,現在,一般大気の測定用に別の気体加熱濃縮器(GAS-10,東亜DKK社製)とGC/C/IRMSを用いて高精度の水素安定同位体比の高精度分析も可能になった(さらに,新たに中古の気体加熱濃縮器(ATD-400,パーキンエルマー社製)を購入し,現在,申請者所属機関のGC/C/IRMSと融合・自動化させる予定である)。最終的には,呼気の濃度レベルである数ppbの混合VOCsガス(25~30成分)の繰り返し分析で,標準偏差が一般環境の測定と同じ分析精度になるような条件を決定することが出来た。これらの結果は国際学術雑誌のAtmospheric Environment誌に報告することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,肺がん患者の測定を開始し,非肺がんと肺がん患者の結果から,特徴を把握することを目指したい。また安定同位体比に関しては,水素安定同位体比だけでなく,炭素安定同位体比等の高精度な簡易分析法を確立していきたい。さらに最新の統計処理を使って,肺がん患者の新たな診断方法を開発することを目指していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画としては,呼気分析に用いる加熱濃縮器の消耗品や修理費,また安定同位体比に関する消耗品等に使用する予定である。安定同位体比に関する消耗品費は装置の価格が非常に高く,それに比して高額になってしまうので,ほとんどの経費は消耗品費として使用する予定である。
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