2012 Fiscal Year Research-status Report
がん幹細胞仮説とミトコンドリア代謝学の融合から新規抗腫瘍薬の創成に挑む
Project/Area Number |
24650644
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
清野 静香 山形大学, 医学部, 助手 (80571653)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | cancer-initiating cells / oxidative metabolism / mitochondria |
Research Abstract |
我々の研究グループはこれまでにWarburg効果がミトコンドリア依存的細胞自殺の抑制を通じてがん細胞に生存アドバンテージを与えており、Warburg効果の解除によりがん細胞の細胞死( 治療)抵抗性を克服できる可能性を世界に先駆けて提唱してきた。さらにそのような可能性を実証するため腫瘍細胞のミトコンドリア呼吸を促進できる薬物を探索し化合物Xを同定した。我々はすでに化合物Xがin vitroにおいて培養腫瘍細胞に対する化学療法薬剤の殺細胞効果を増強することや、このような化合物Xのもつ殺細胞効果増強作用がミトコンドリア呼吸依存的であることを確認している。そこで本課題においては「Warburg効果や腫瘍低酸素ががん幹細胞維持に重要な役割を果たしている」という仮説を検証すべく、化合物Xががん幹細胞の幹細胞特性に与える影響を検討した。その結果、がん幹細胞を化合物Xに暴露すると、幹細胞マーカーの発現低下と分化マーカーの発現上昇、ならびに腫瘍形成能の低下が認められた。これらの結果はミトコンドリア呼吸の抑制すなわちWarburg効果や腫瘍低酸素ががん幹細胞特性維持に重要な役割を果たしている可能性を示唆するものである。興味深いことに、本課題の研究遂行過程で、この化合物Xはp53依存的に幹細胞維持タンパク質の分解を行うことでがん幹細胞の幹細胞性喪失を促進していることを示す、全く予期せぬ結果を得た。これらの結果は化合物Xががん幹細胞の抑制を通じて腫瘍再発抑制に貢献しうる可能性を示唆していることから、本研究課題では引き続き化合物Xのがん治療効果について移植腫瘍マウスモデルを用いた検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の作業仮説を実証する結果を得たことに加え、予想外の新知見も得られたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
化合物Xの作用機序の分子機序解明を通じてがん幹細胞維持機構を解明するとともに、化合物Xをはじめとするがん幹細胞標的治療薬のがん治療効果について検討を加える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
移植腫瘍モデル作成用のマウスを購入する。がん幹細胞維持機構を解明するための分子細胞生物学的解析に必要な試薬や、化合物Xをはじめとするがん幹細胞維持機構分子標的治療薬等を購入する。
|