2012 Fiscal Year Research-status Report
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24650650
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Research Institution | 愛知県がんセンター(研究所) |
Principal Investigator |
関戸 好孝 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 部長 (00311712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 英作 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍病理学部, 部長 (30252951)
藤井 万紀子 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 主任研究員 (70406031)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 癌 / トランスレーショナルリサーチ / シグナル伝達 |
Research Abstract |
悪性中皮腫細胞株で高頻度のホモザイガス欠失が認められる、代表的な腫瘍抑制遺伝子であるCDKN2A/ARF遺伝子に着目してバイオツール(細胞膜透過性機能ペプチド)を用いたin vitroにおける検討を行った。CDKN2A (蛋白質はp16INK4Aおよびp14ARFをコードする)の不活性化した4つのヒト悪性中皮腫細胞株(NCI-H2052、NCI-H2373株、および当センターで樹立したY-MESO-12、Y-MESO-30株)および、p16INK4A/p14ARFのタンパク発現が正常である不死化正常中皮細胞株(MeT-5A)をコントロール細胞株として用いて実験を行った。蛍光標識タンパク(FITC)およびp16INK4Aの機能を回復させるために必要な最小の配列(p16 MIS)にD-鏡像異性体アルギニンを9つ付加したペプチド(r9、r9-p16 MIS)の2種類の細胞膜透過性機能ペプチドを作成して使用した。蛍光標識したポリアルギニンペプチド(r9)を培養した細胞株へ投与した。ペプチドを投与した48時間後にトリプシン処理をして細胞を回収し、蛍光顕微鏡で観察したところ、いずれの細胞でもペプチドが細胞内へ取り込まれていることが確認された。さらに、r9-p16 MISペプチドを投与し、形態学的な変化を観察したところ、20 micromol/Lの濃度のペプチドを投与した場合には顕著なアポトーシス様の形態学的変化を認めた。本年度の研究により細胞膜透過性機能ペプチドが複数の中皮腫細胞株に効率よく取り込まれ、またその腫瘍抑制性の機能を果たすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は悪性中皮腫細胞において最も高頻度に不活性化しているCDKN2A/ARF遺伝子に着目して検討を進めた。細胞膜透過性機能ペプチドはその配列によって、ヒトの癌の種類や組織型、増殖状況などの培養条件によって細胞内への取り込み率が著しく異なる場合があるが、今回用いたD-鏡像異性体アルギニンを9つ付加したペプチド(r9)が、検討した4つの全ての中皮腫細胞株に比較的効率よく取り込まれることが確認できた。さらに、p16INK4Aの機能が不活化している中皮腫細胞株にp16INK4Aに関する機能回復性の最小配列ペプチドを導入し、それぞれの中皮腫細胞株にアポトーシスを誘導できたことは、細胞膜透過性機能ペプチドを用いた本アプローチが新たな中皮腫治療戦略の候補として極めて有望であることを示したものと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討ではポリアルギニンを付加したペプチドは中皮腫細胞にもよく取り込まれると共に、p16 MISの配列にポリアルギニンを付加することでp16INK4Aが不活性化した中皮腫細胞でアポトーシスを誘導できる可能性が示唆された。ただ、実際にp16INK4Aの機能が回復し、p16INK4Aが関与する腫瘍抑制性の細胞内シグナル伝達経路が実際に活性化されることによってアポトーシスを生じたかについてはより詳細な機能解析が必要であると考えられたのでこの点についての検討を加える。また、今回の実験では不死化正常中皮細胞でもペプチドの取り込みが確認され、アポトーシスを若干、誘導して正常細胞にも障害が認められたことからその点についての検討を加えることも必要と考えられた。さらに、他の腫瘍抑制機能を有するペプチドを導入して、その取り込み効率、細胞増殖抑制やアポトーシス誘導能に関する検討を加え、本研究計画で取り組んでいる細胞膜透過性機能ペプチドを用いた治療戦略が中皮腫の新規治療法として有望かどうか詳細に検討を加える。本アプローチ法により、NF2-Hippoシグナル伝達系の不活性化の結果、恒常的に活性化しているYAPがん遺伝子産物の機能を阻害することが可能かどうか検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養のための培地、血清、各種プラスチック培養器具、また細胞生物学的な検討のための各種試薬、キット類などの購入に主として充当する。
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Research Products
(3 results)